通常、地上レーダーサイトからゴースト(レーダースコープに正体不明の影が映ること=鳥の大群の場合もある)やストレンジャー・インフォメーション(正体不明機の飛行情報)をもらえば、スクランブルがかかり目標に接近する。
「それがバルーンだったりすることもあるが、目視している明るく輝く物体はレーダーに捕捉されていなかった。われわれが目視している物体がレーダーに映らないというのは科学では考えられない」と、U元二佐は結論付けた。
1981年、宮崎県新田原基地での体験談。夜間要撃ミッションにおいて、『F-15J』パイロットの桧垣哲雄元二佐は、レーダーに映らない不可思議な光を目撃した。2機編隊での訓練空域で、右真横方向約9キロメートルに白いライトがほぼ同高度で飛んでいるのを見つけたのである。
「2番機は真横には飛んでおらず、横にいた飛行物体は蛍光灯に近い青白い光だった。GCIO(地上の要撃管制官)にストレンジャー情報を聞いても、周辺に他機はいないというし、後方を飛行する2番機に聞いても桧垣機の横には何もいないという。あれは一体、何だったのか」
こうした目撃情報が多数存在するという。しかし、それが日の目を見ないのはなぜなのか。
「UFOに遭遇したなどと言えば精神異常を疑われかねない。精神的におかしいパイロットを任務に就かせるわけにはいかないので、パイロットを辞めて地上勤務に移るか、最悪、自衛官の職を失うかしかありません。ただ内輪では、『見たぞ』という会話は普通に交わされています」(佐藤氏)
'83年頃、松島基地で起きた事件は象徴的だ。
『T2』練習機(2人乗り)において、前席に教官のM一尉、後席にも教官のG一尉が学生の要撃訓練の目標機として飛行し、基地への帰投中1万5000フィート辺りでG一尉が“葉巻型”の物体を発見(M一尉は未確認)した。直後に機体のコントロールに異常を感じたが、物体を見失うと機体は正常に戻った。
基地に戻ると、いかなる機体トラブルも詳細に整備記録に記入し整備員に説明しなければならない。整備員は機体を点検後異常なしと確認し、再度点検のために確認飛行をすることになった。今度はM一尉が別のパイロットと確認飛行に飛び立った。操縦系統に異常なしと判断し、今度も基地への帰投中に“葉巻型”の物体と遭遇した。と、同時に前回と同じトラブルが機体に発生。またもや物体消失後に機体は正常に戻り、同じように整備記録に記入し整備員に説明したが、これも異常なし。そこで司令部が得た結論は、G、M一尉の証言には疑問があるということになった。
万一、2人の報告したトラブルが事実ならば、全国に配備されている『T2』、その改造型の『F1』支援戦闘機全機が故障探求の対象になる。製造した国内メーカーも巻き込み、一大事となるのは明らかだった。
点検にかかる費用も莫大なものとなる。この事項は、航空幕僚監部を巻き込む大問題に発展し、空幕の担当幕僚からの指令により司令部に呼び出された2人は、以後一切この問題に口を開くことはなかった。