星野 昔、月刊誌の取材で芸能界の仕組みを調べているときに『5社協定』という単語がネットで出てきました。俳優が特定の映画会社しか出演できないなんて、これは「独占禁止法違反」なのではないかと思い、興味を持ったのがきっかけでした。“某一般社団法人”(笑)が決めた事務所間の引き抜き協定は、置屋の芸者のごとく、今もタレントや俳優たちを縛り付けています。また、この某一般社団法人の影響の下、金銭的にも自由が奪われているのです。
芸能界は1兆2千億円産業です。芸能界の中枢には談合組織がうごめいていて、秘密協定の謀略がたくさんはびこっています。この変なルールは事務所のみならず、テレビや映画界などでもまかり通っています。ただ、芸能界のカラクリをしゃべるとすぐに業界で干されるので、取材は難航し、資料集めは5年ほどかかりました。最終的に資料の量は膨大になり、雑誌の芸能記事のコピーだけでも2000本ほど読みあさるはめになりました。
−−大手芸能プロダクションが業界で幅を利かせているために大きな弊害があると感じるのは、どんなことですか?
星野 日本のテレビドラマや映画は、海外に輸出できるクオリティーになっていません。それは、まず大手芸能プロダクションがキャスティングを握り、内容まで踏み込んでくるからです。私は、そこが一番の問題点であり、改善すべき点で、この本で一番訴えたかったことなのです。
大手芸能プロダクションが業界で幅を利かせているうちは、いい作品は生まれません。私はこの既存の仕組みを何とかして壊せないものかと思ったのです。
−−芸能プロダクションと暴力団の関係にまで踏み込んでいます。何か嫌がらせはなかったのですか? また今後、第2弾、第3弾を刊行する予定などはありますか?
星野 嫌がらせは特にありません。ただ、その筋の人から「○○(※36歳のカリスマ美人アーティスト)の下半身スキャンダルを調べる仕事を依頼したい」という電話がありました。まあこの件を含め、第2弾が出るなどというと妨害されますから、ノーコメントとさせてください(笑)。
(聞き手:ハイセーヤスダ)
星野陽平(ほしの ようへい)
1976年、東京都生まれ。2001年、早稲田大学商学部卒業。フリーライター。編著に『実録! 株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)など。