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話題の1冊 著者インタビュー 武田薫 『マラソンと日本人』 朝日新聞出版 1600円(本体価格)

 −−日本のマラソンの歴史についてまとめた本は珍しいですね。

 武田 スポーツは日によって違うヒーローが生まれ、選手の肉体もいずれは衰えていくように、生身なんですよ。ですから、スポーツを書くことの“凄味”は、その変化していく瞬間を捉え書くことだと思います。でも、それを長期間にわたってつなげて書くことができないから、通史を書く人が少ないのかもしれません。
 その要因の一つは、日本ではあらゆるスポーツに新聞が、主催、後援として関わってきたことが大きい。良い面としては、新聞の全国版の広がりとともに、マラソンや野球などが全国津々浦々まで広がったことです。ただ、同時に批判能力まで消えてしまった。自社が主催する大会の批判を記者はなかなか書けないですよね。

 −−何か他に海外との違いはありますか?

 武田 私は新聞社を辞めた後、ポルトガルに住んでいました。向こうで驚いたのは、マラソンは陸上競技として認められていないこと。陸上競技とは、競技場のトラックやフィールドでやるものだという認識なんです。
 それと日本のスポーツ界はあまり反省をしません。だから同じことを繰り返すことになるのですが、かつての選手たちに、どんなトレーニングをしていたかを聞きに行けばいいのに、そういうことはせず、全てまた一から始めようとする。それに日本のスポーツ界は批判を嫌いますが、どんなに腹立たしい批判であったとしても、それを跳ね返しながら良くなっていくものだと思うんですけどね。

 −−つながりが大切ということですね。

 武田 これまで主にマラソンやテニス、野球を取材してきました。どれも日本では歴史があります。大正から昭和初期の新聞を見ると、テニスの扱いは非常に大きい。戦後の低迷していた時期でもテニスの報道はありましたし、現在もテニス専門誌は3誌もあります。そういう歴史があるからこそ、錦織圭だって海外へ出て行くことができた面もある。
 また、マラソン中継を地上波で生中継し、楽しめる国民というのも珍しいですし、日本のように沿道であんなに多くの小旗を振りながら応援する光景も他の国ではないことです。やはりスポーツに対する理解度、つまり伝統があるということなんです。
 マラソンは身近なスポーツだからこそ、ストーリーがわかりやすい。本書を読んでいただいて、土台となる歴史を知ることで、よりマラソンを楽しんでもらえれば著書冥利に尽きますね。
(聞き手:本多カツヒロ)

武田薫(たけだ かおる)
1950年、宮城県生まれ。スポーツライター。マラソン、野球、テニスを中心に取材。著書に『ヒーローたちの報酬』(朝日新聞社)など多数。

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