国立感染症研究所によると、全国3000カ所の小児科や保健所などで確認された患者は秋ごろから増え始め、11月に入り、16〜23日の1週間で1カ所あたり平均5.74人となり、前週に比べ、4割近く増えた。症状は激しい下痢や嘔吐による脱水症状がおこり、最悪死亡するケースもある。そんなノロウイルスの実態を認識し、十分な予防措置を取らないと危険だ。
10月22日、『ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル』の客181人が下痢などの体調不良を訴え、89人からノロウイルスが検出された。また女子栄養大学坂戸キャンパスでは学生と教職員計146人が感染し、関西の奈良大付属幼稚園でも児童28人が嘔吐や腹痛を訴え、数人からノロウイルスが検出された。
昨年の大流行に比べやや下回っているとはいえ、例年、年末から1月にかけてピークを迎えるため、感染研は「手洗いの徹底など予防に心がけてほしい」と厳重注意を呼び掛けている。
また、ノロウイルスは抵抗力が弱い子供や高齢者だけでなく、体力のある若者にも感染するから油断は禁物だ。
感染研の関係者はこう説明する。
「ノロウイルス感染が12月から1月の寒い季節にピークを迎える理由は、はっきりとはわかっていません。ただ、ノロウイルスは高温に弱く、夏場は2〜3日で死滅しますが、冬場は1〜2週間も生き続けることが確認されています。長く生きる分だけ、さまざまな場所へ拡散し、感染する確率が高くなると考えられます」
そんなノロウイルスの特徴を最も表した事例を次に紹介する。
'06年12月、東京・池袋の大手ホテルで、多数の利用客とホテル従業員にノロウイルス食中毒が発生し、患者数はホテル利用客292人、従業員55人の計347人に上った。しかし、ホテルの調理人やウエートレスなど食事を扱う人たちからはウイルスは検出されなかった。また、発症者に共通した食べ物も見つからず、ホテルで食事を取らなかった客にも患者が発生していたことが判明した。このことは、ノロウイルスが外から持ち込まれたものであることを示した。
ところが、さらに調査を進めると、患者となった客の大部分がホテルの3階と25階の利用者だったという奇妙な事実が明らかになった。聴き取り調査を進めると、体調不良を訴える客が出始める3日前に、1人の女性客が3階のロビーと25階の通路で2度に渡って嘔吐したという。この対処でホテル側は、嘔吐物を掃除し、中性洗剤で後を拭き取った事が報告された。
これにより、事件の原因がようやく突き止められることとなった。ノロウイルスに感染して発病したこの女性が吐いた時に、ウイルスを含む飛沫がエアロゾルになって飛散して空気中を漂い、それを吸った人たちが感染したのだ。