まず、精神・神経医療研究センターの関係者はこう言う。
「睡眠について、自分が適切に眠れているかを判断するには、夜ではなく昼間のことを考えるのが原則だ。日中に眠たくて仕方がない、集中力がない、怠いなどの問題が起きなければ、夜中に目覚めた回数や睡眠時間をあまり気にする必要はないでしょう」
理由はわかりやすい。人は年齢とともに睡眠時間が短くなるとされ、本当に眠っている時間を脳波で測ると、平均で8時間以上眠るのは中学生ぐらいまで。70歳を過ぎると6時間を切るのがほとんどで、老化現象の一つとして避け難いものだという。
「生活習慣も関係して、運動もしなくなり頭を使うことが少なくなるからです」と、精神・神経医療研究の関係者は説明する。
今年はソチ五輪が開催され、深夜のライブ応援のせいで寝不足気味の人が多かったはず。そうでなくとも、普段からの慢性的な睡眠不足で起こる“睡眠不足症候群”に気付いてない人が意外と多いといわれている。しかし、睡眠は人によって適した睡眠時間は違う。自分に合った睡眠時間を判断するには、どうしたらいいのかなどの課題は確かに残る。
まず、睡眠のメカニズムについて知っておく必要があるだろう。睡眠は、深い眠りと浅い眠りが約1時間半の周期で繰り返される。中でも最初の2周期は、就寝から3時間で最も深い眠りが表れる。成長ホルモンが活発に分泌され、体の疲労を回復させる時間帯だからである。
睡眠指導の経験をお持ちの荏原クリニック・荏原恵一朗院長は、室温や寝具を例に話してくれた。
「環境省が推奨する寒い時の室温は20℃。ただ、布団の中は体温で33℃ぐらいまで上がるので、室温の温度が低めでもOKです。室温が3℃でも、温かい布団があれば眠れはするが、冷たい空気が肺に入って体温が下がり過ぎてしまうことがある。理想的な室温は、布団から出たとき1枚羽織ってちょうど良い15〜18℃ぐらい。寝つきを良くするには暖房機器をつけ、就寝3時間後にタイマーを切るといいでしょう」
また同院長は、湿度にも気を付けるべきだと言う。乾燥すると、喉の粘膜が乾きウイルス感染しやすくなるため、加湿器を使って40〜60%に加湿するようにする。逆に湿度が高すぎると室内が結露するので、温度計を置いて寝室環境をチェックすることも大切だ。
こうした寝室環境を整えることは当然必要なことだが、一方で年齢とともに寝床にいる時間は長くなることも現実にはある。年を重ねていくうちに、多くは午後9時ごろ寝床に入るが、睡眠時間は平均6時間なので、夜明け前に目が覚めてしまう。若い頃の長い睡眠時間を求めるのは、無いものねだりだ。眠くないのに寝床に入るのはやめ、6時間の睡眠を長い夜のどこにはめ込むか、工夫する方が大事になる。