他にも、HIV感染症や甲状腺機能異常症、血液の病気など、難治性のかゆみを生じさせる病気は数多くある。そのため病の特定も難しく、医療機関を訪れる多くの患者は原因不明のかゆみに苦しむのだ。
「難治性のかゆみと病気の関係は、まだはっきりと解明されていないことも多く、世界中で研究が進められています。ただ、いずれにしてもかゆみは体からの危険信号と言っても過言ではないでしょう。謎のかゆみに襲われたら、すぐに医療機関で診察を受けて頂きたい」(同)
さて、一般的にかゆみは“引っ掻きたい”衝動(掻破衝動=そうはしょうどう)を起こさせる特殊な皮膚感覚を指す。
「かゆみは引っ掻くことで症状が軽くなりますが、一方で新たなかゆみが誘発され、皮膚が傷つき長引く場合が少なくありません。病院で『かゆくても掻かずに我慢して』と言われても、どうにもならない時は無意識のうちに掻いてしまい、もっと酷くなる。日常生活ではなるべく掻かないように心掛けるしかありません」(同)
治療としては、市販薬の抗ヒスタミン薬を試みるのもいいかもしれない。発疹がないかゆみの場合は保湿外用薬(尿素系など)、また、発疹があるかゆみの場合はステロイド外用薬を塗るのも効果的な場合がある。
「いずれにしても、これらの薬物療法で十分な治療効果が得られない場合や、睡眠が妨げられるほどのかゆみがある場合は、皮膚科を受診することをお薦めします」(前出・村上氏)
重度に限らず、かゆみで真っ先に出てくる“乾燥肌”。やはり寒い季節に年齢、性別問わずに発症し、背中を中心にかゆみが出る。特に深刻なのは高齢者のドライスキンだ。乾燥肌が背景となって起きる「老人性皮膚掻痒症」で、老人性乾皮症とも呼ばれる病気である。
「加齢による汗指腺分泌能の低下や角質保湿能を保つ表皮脂質の減少で起きますが、生活環境の低湿化(エアコン、過度の暖房や誤ったスキンケア=入浴過多と肌の擦り過ぎ)によって悪化している場合もあります。高齢者は皮膚の新陳代謝が低下しているので、連日の入浴の必要はありません。そして高温の湯は避け、住環境では加湿も行うようにする。入浴後は乳液、クリーム、保湿剤などをしっかりと使用することも重要なポイントとなります」(前出・専門医)
かゆみは、日頃の肌のケアによって回避できる場合もあるが、頑固なかゆみの場合は、肝機能検査や血液検査をすることで軽い症状のうちに治すことも可能。煩わしい“かゆみ地獄”から脱出するためにも、一度その症状と向き合ってみてはいかがだろうか。