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本好きオヤジの幸せ本棚(46)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『幻の女』(ウイリアム・アイリッシュ/稲葉明雄=訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 987円)

 今、NHKの大河ドラマでは『八重の桜』が放映中だ。毎週日曜の夜8時を楽しみにしている方は多いだろう。このドラマがなぜ面白いのか、いくつか理由があるのだけれど、何といってもかわいくて果敢なヒロイン像がいい。かわいいだけでおとなしいわけではなく、男たちの戦いの世界へ自ら参入していく。でも、女らしさは忘れない、という微妙なバランスの良さを綾瀬はるかが演じている。
 こういうキャラクターを好ましく感じる人は多いのではなかろうか。男性の方が女性より優れている、とはいえない。しかし、男が社会の最前線に出向き、女は少し後に退く形がちょうどいい、という社会のルールめいたものが、今も日本では(もしかしたら海外でも)消えてなくて、そのようなものに不満を感じる人は『八重の桜』の主人公を応援したくなるのかもしれない。
 男とは違う女ならではの強さがあるはずなのだ。それを見事に描いた作家を探してみた。アメリカのコーネル・ウールリッチ、別ペンネーム=ウイリアム・アイリッシュがまさにそういう作家だ。本書『幻の女』をぜひ読んでいただきたい。無実の罪で投獄された男性主人公を救うために恋人の女性が独自の捜査を始める。野蛮な奴らに遭っても捜査をあきらめない果敢さが実にいい。原書刊行は1942年でかなり以前だが、全く古びていない。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『プロ野球 もうひとつの攻防』(井昆重慶/角川SSC新書・819円)

 プロ野球でチーム編成をつかさどるのがフロント。ドラフト、トレード、契約更改などを行い、勝てるチームを作り上げていく。オリックス球団代表として、日本一も成し遂げた著者が、イチローらとのやりとりを例に交渉現場を紹介する。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 『料理通信』(料理通信社/980円)は国内外のレストラン事情を掲載した月刊誌だが、「客」を対象とした媒体というより、飲食店経営者やその場で働く人たちを読者として想定しているところが特徴だ。
 最新号の特集は、「『シェア』する店の作り方」。八百屋とカフェバー、スナックとカレー店、酒販売店と魚料理店など、1軒の店が2つの顔を持つ“兼業”を「シェアする店」と呼び、経営ノウハウやメニューの作り方などが誌面を埋め尽くしている。つまり飲食店のビジネスモデルを提案した内容なのである。
 「シェア」の方法もさまざま。店舗を2つの業態が分け合う店、昼と夜とでは違う店など、なるほど納得の「作り方」が展開されており興味深い。
 そういえば「味自慢の漁師宿」などがテレビで放送されることも少なくない。格安の上に魚は新鮮でうまい。“兼業”の元祖だろう。客のニーズを捉えた商売こそが、不況を生き抜く秘訣だろうか。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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