会社員のBさん(42)は、食事をするときに喉に違和感があった。一週間ほど前に風邪を引いた後、鼻水やくしゃみは無くなったものの、喉の痛みだけが残り、食べ物を飲み込むのも辛いほど痛い。治まるまで1カ月近くかかったが、症状はなんとか収まった。
しかし、その後、2〜3カ月に1回のぐらいの割合で40℃近い高熱と激しい喉の痛みに襲われるようになった。ひどい時には会社を2、3日休むほどの痛みがあり、近くの耳鼻咽喉科医院で診察を受けたところ「慢性扁桃炎」との診断。
治療は受けたが1年間に何度も欠勤を繰り返し、Bさんは閑職への異動を余儀なくさせられてしまったという。
日本医科大学病院耳鼻咽喉科大久保公博主任教授は説明する。
「扁桃炎は風邪などをきっかけに発症するケースが多い。ウイルス感染に伴い、扁桃の一つである口の奥の口蓋扁桃に溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が感染して炎症を起こすのです。最初に扁桃炎を起こしたとき、抗生物質や鎮静剤などを医者で処方してもらい、数日服用すれば治り再発は繰り返しません」
しかし、このときに薬による十分な治療をしないと厄介なことになる。
「口蓋扁桃にはくぼみがあるため菌が棲み着きやすく、一度そこに入り込むと完全にやっつけるのが困難。その結果、2〜3カ月に1回ほどの割合で何度も扁桃炎を繰り返すようになる。これを慢性扁桃炎というのです」(同)
仕事などの都合でなかなか医者に行けない成人は、扁桃炎から慢性扁桃炎に移行してしまうケースが珍しくないというのだ。
もう一人、前出のBさんより厳しい体験をしている自営業Kさん(51)も紹介しよう。
Kさんは喉に違和感を覚えていたが、次第に食べ物を飲み込むのも辛いほど痛みが増し発熱もあった。
風邪だと思い、市販の風邪薬でしのいでいたが、やはり40℃の高熱で起き上がれない日が多くなり、口から水も飲めないほどの激烈な咽頭痛に襲われた。
耐え切れなくなったKさんは大学病院の耳鼻咽喉科に駆け込んだところ、担当医の診断は「扁桃炎が重症化して首の奥にまで膿が溜まっている」だった。
Kさんは即入院、緊急手術を受けることになり、入院生活は1カ月近くに及んだ。しかし、それだけでは終わらなかった。退院後も何度も扁桃炎を繰り返して慢性化し、最終的には喉を切開、扁桃の摘出手術を受けることになった。