A:ご質問の方は、気真面目とのこと。仕事に真剣に取り組み頑張るために、常に“こころ”が苦しい状態にあるのでしょう。
病態からして、西洋医学的には「過敏性腸症候群」であると思われます。それがなぜ春先になると現れるかというと、春という季節が関係しています。
ご質問の方のように春先になると体調不良になるのは、春は本来、東洋医学で言うところの「気」(=生命力)が巡らなければならない時期だからです。この時期に「気」が順調に巡らないために、つかえ感や張るなどの不定愁訴が現れるのです。
●休肝日をもうけよう
東洋医学では、「気」の巡りの調節は、肝が行うと考えています。肝のつくりの「干」は「盾」という意味で、その形が似ていることからの命名です。そこから派生し、社会のストレスから盾のように身を守り、気をスムーズに巡らせるように働く臓器と考えられるようになりました。これは西洋医学の肝臓の働きとは異なる点なので、注意が必要です。
つまり、肝がうまく働かず、そのために、気の巡りが悪くなる「気滞」となった。これが、東洋医学的な、ご質問の方の病気の状態なのです。
この「気滞」を改善する基本的な漢方薬に、『四逆散』があります。「逆」とは、人をさかさまにした状態を表す字で、定まった順序に逆らうという意味です。つまり、定められたように気が巡らず停滞した状態を、4種の生薬で治療する薬、というわけです。
しかし、四逆散は下痢を止める力は弱いので、そこで下痢に効果がある「立君子湯」を併用します。
肝を休ませるためには「休肝日」が必要です。お酒を飲まないことも、確かに肝臓を休ませることですが、それとは微妙に考え方が違います。つまり、仕事への意識や仕事のストレスから離れ、“こころ”を解放することが、肝を休ませること。休日は趣味に没頭するなど、のびのびとした時間を過ごしましょう。
三浦於菟氏(吉祥寺東方医院院長)
熱心な東洋医学の名医として著名。東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。東邦大学医学部東洋医学科教授を経て、同大学客員教授。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。