それにつけても、前走の東風Sで賞金を加算できなかったのは、陣営にとっては大きな誤算だった。戦前、伊藤助手はこういって大見栄を切ったものだ。「中山千六は最高の土俵だからね。正直、負けられない気持ちですよ」
ところが、結果は痛恨の3着。敗因は複合的な要素が重なった。中でも一番心配していた不良馬場に殺されるとはあまりにも皮肉。レースでは不利もあった。「4角で勝ったショウワモダンに被され、さらに逃げた馬がバテて下がってきたため動くに動けない状態だった」と桑原調教厩務員は唇をかんだ。
この悔しさは勝って、溜飲を下げる以外に方法はない。幸いにも敗因は歴然だし、ダメージもない。良馬場で臨めれば、巻き返しは十分可能だ。「結果は3着だけど、後ろの馬は(1馬身4分の3差)離しているからね。悲観はしてません」と伊藤助手は決意も新た。
本来、叩き良化型で状態も確実に上昇カーブをたどっている。桑原調厩員は、「3歳時に黄梅賞→NZTを連勝したころが絶好調でしたね。あの時のデキにはまだだけど、休み明け3戦目で今回が一番いい状態で臨めるでしょう」と笑顔を振りまいた。
ちなみに、初勝利を挙げたのも今回と同じく3戦目だった。先週の水曜日の時点で、馬体重は前走と同じ528キロ。「でも、数字以上に体は締まってきました。追い切りと輸送で当日は520キロぐらいで出られそうです」(桑原調厩員)
今年で6歳。27戦というキャリアを考慮しても身体能力がピークの状態を保っていられる期間はもう限りがあるだろう。それだけに、今年は勝負の年になる。
「今度は悔いが残らないように、ぜひ、良馬場でやりたい。不利なく走ってくれば、結果はついてくると信じてます」。2人は口をそろえてそう言い切った。