しかし、この工藤さん、春の健康診断の結果をもらってびっくり。なんと、肝機能検査でγ-GTPの数値が2000もあったのだ。
「確か去年は160で“要注意”と言われた。最近やや体調が悪いけど、この数値は何かの間違いだろう」
と周囲に漏らした。
実は工藤さんは以前、胆石で2度ほど入院した経験があった。ここに、肝臓の数値に異常が出た原因があったのだ。
世田谷井上病院の井上毅一理事長が説明する。
「γ-GTPとは、肝臓や腎臓などで作られる酵素で、肝臓では肝細胞や胆管細胞、胆汁の中にも存在し、たんぱく質を分解・合成する働きがあります。また、お酒の飲みすぎや薬の服用などにより、γ-GTPがたくさん作られるようになる。そのため血液中に漏れ出すことにより、数値が上がるのです」
工藤さんが患っていた胆石症について井上氏の説明を聞こう。
「胆汁の流れ道に石ができてしまう病気が胆石症です。胆のうの中の石が『胆のう結石』、胆管の石を『胆管結石』肝臓の中の胆管にできた石を『肝内結石』といいます。胆汁には脂肪の消化を助ける働きがあり、コレステロール、ビリルビン、カルシウムなどを主成分として肝臓で作られ、胆のうに蓄えられている。脂肪の吸収を助けるために必要に応じてその袋を収縮し、胆管を通って十二指腸に放出されるのです」
胆石ができると、腹部上部、腰や肩、右肩下の痛み、吐き気や嘔吐、お腹の張りや高脂肪食品を食べた後の体の不調、おなら、消化不良、悪寒、微熱、肌や目が黄色くなったり、便が白っぽくなる症状が出る。しかし、何が原因で胆石ができるかというと、「加齢、妊娠、高脂血症、糖尿病、肥満、ビタミンC不足の人などがリスク要因だといわれていますが、はっきりとはわかっていない」(井上理事長)という。
確かに、工藤さんの場合も、健康診断で高脂血症と診断されたことがあった。
では、胆石症と肝機能はどういう関係があるのだろうか。
「胆汁は一日に約1リットルも分泌され、脂質や脂溶性ビタミン(水に溶けにくく、脂に溶けやすいビタミン)などを乳化して消化・吸収しやすくしています。肝機能が低下して胆汁が十分作られなくなると、小腸での脂質や栄養素の消化吸収が悪くなり、水分のみ多く吸収され、栄養素を取り逃がしてしまう。吸収されない栄養素は腐敗作用を起こし、大便が悪臭を帯びるばかりでなく、便秘の原因になってしまいます。また、肝臓で作られた胆汁は、細い肝内胆管に分泌され、胆のうや総胆管などの胆道を通り十二指腸へ排出されますが、この流れが滞れば、肝臓の働きは低下する。胆石があり、度々発作が起きたり、慢性的に炎症が生じているときには、肝機能障害を招く危険性があるのです」(井上理事長)