皆さんは“アート”について考えたりしますか? 街には様々な銅像があったり、駅にはさりげなく絵が掲げられたりと、今や生活の中でもあまり珍しい光景ではなくなりました。でも、自分自身がどう興味を持つかで、その値打ちっていうのは大きく変わります。
今回はドキュメンタリー映画『太陽の塔』。誰が制作したのか、どこにあるのかはきっと誰もが知っていると思いますが、その制作秘話がとても興味深いのです。
私は一度だけ、太陽の塔を“生”で見たことがあります。とある映画のプレミアが大阪で行われた時、出演俳優と一緒に出番待ちの際、太陽の塔を眺めながら“たこ焼き”を食べた思い出があるのですが、太陽の塔の中を見に行くわけでもなく、歴史について聞くわけでもなく、正直、何の感動もなかったんです。でも、この作品を見ることで、初めて万博の様子をじっくり知ることができ、早く、もう一度、ちゃんと見に行きたいと思いました。
まだ、外国文化がテレビの中でしか知ることができなかった時代に、大阪万博であのような建物などが突然現れる。日本人にとっては、まさにSFの様な世界。このすごさは当時、大変な驚きだったに違いない。今となればカッコいいと思うデザインも、異物感としか見えなかったでしょう。
そんな時代の常識というものを裏切って、人間たちがこれをデザインし、一生懸命造った。特に、太陽の塔に関しては、なかなか作業が進まなかったことや、独創性のあるデザインに対する反応の数々も興味深い。感性も昔と今とでは違いますから、岡本太郎さんの気持ちに熱くなります。
いくつもの壁を乗り越えなければ造れなかった太陽の塔。岡本さんは「太陽の塔を造れなかったら、オレがずっとそこに立つ!」と言ったそうです。これは、本気で生きてる人の言葉。当時、いろんな人が思い出話や感じたことを赤裸々に話していて、最後の「アートは役に立たないかもしれないけど、一生懸命やる。腹いっぱいじゃなくて、胸いっぱいにしろ!」という言葉が胸に響きます。飽食の時代だけに、私自身、ちょうど先輩方のお話を聞きたかったのかもしれませんね。
皆さんも、自分の国にある素晴らしいものを再発見して、感じて、造った方の思いを知ってほしい。次世代に、どんな影響をもたらしたのかも含めてね。
これを見れば、明日から街中に飾られているアートを、少し違う感覚で見つめられること間違いなし!
画像提供元:(C)2018 映画『太陽の塔』製作委員会
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■『太陽の塔』
監督/関根光才 配給/パルコ 9月29日(土)から渋谷・シネクイント、新宿シネマカリテほか全国順次公開。■1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)の会場に、芸術家・岡本太郎のデザインによる高さ70mの「太陽の塔」が建った。「進歩と調和」をテーマにし、日本国中が浮かれ騒ぐ中、この一大イベントでひときわ異彩を放つ万博のシンボル。岡本は、どんな思いを込めながら「太陽の塔」を造り上げたのか。事業に関わる人たちの制作にまつわる話から、岡本自身のエピソードなど、各界識者29人へのインタビューを通して検証していく。
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LiLiCo:映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS「大様のブランチ」「水曜プレミア」、CX「ノンストップ」などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。