A:PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーですが、前立腺炎や前立腺肥大症などの良性疾患でも上昇します。正常値は4ナノグラム/ミリリットル以下です。
PSAは加齢とともに高くなります。ご質問の方が心配されるのも無理はないでしょう。10ナノグラム/ミリリットル以上のように高い場合は、がんの確率が高まります。4〜10ナノグラム/ミリリットルの間は悪性と良性のグレーゾーンですが、がんの疑いも否定はできません。
PSAは前立腺がんの早期発見に役立ちます。しかし、早期発見は過剰な治療にもつながります。東邦大学医療センター大森病院泌尿器科の中島耕一教授は、
「早期がんの発見は一方で過剰診療の懸念をはらんでいる点も無視できない。PSA検診および生検、前立腺がん治療における利益・不利益を明確にし、患者への情報提供を間断なく続ける努力と、不必要な生検・過剰な治療を回避するシステム構築が泌尿器科医には課せられている」
と述べています。
●性機能に影響しない薬
ご質問の方の場合、正常値をわずかに超えています。私はこのような患者さんに対しては、「クロルマジノン」という薬を処方しています。
この薬は1錠25ミリグラムで、前立腺肥大には1日2錠、前立腺がんには1日4錠を服用することになっています。抗アンドロゲン剤、つまり男性ホルモンを抑える薬なので、インポテンツや性欲低下の副作用があります。
これを、まず1日に25ミリグラム1錠から処方します。すると、PSAの数値は低下しますが、ほとんどの人には性機能に影響は見られません。
ご質問の方も、この薬を服用されるとよいのではないでしょうか。
まずは泌尿器科の医師に相談してみてください。
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牧 典彦氏(ほほえみクリニック院長)
自律神経免疫療法(刺絡)やオゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。ほほえみクリニック(大阪府枚方市)院長。牧老人保健施設(大阪市北区)顧問。いきいきクリニック(大阪市北区)でも診察。