これは、今年に入ってから現職警察官が起こした交通事故を洗い出しただけでも一目瞭然だ。
【4月3日=埼玉県警の巡査部長(42)が運転する車が、自転車に乗っていた男子高校生に衝突。打撲などの軽傷を負わせたが、巡査部長はそのまま逃走し、逮捕】
【5月12日=千葉県警機動捜査隊の男性巡査長(33)が仕事帰りに飲酒運転。同県警が巡査長に停職6カ月の懲戒処分を下し、道交法違反の疑いで千葉地検に書類送検。巡査長は同日、依願退職】
【7月6日=徳島県警の女性巡査が勤務中にバイクで転倒し、そのまま自転車に乗っていた女性と接触。女性巡査はこの事故を届け出ておらず、自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道交法違反(事故不申告)の疑いで書類送検】
このほかにも資料を遡れば、飲酒運転や当て逃げ、ひき逃げ、さらには死傷事故まで枚挙に暇がない。中でも悲惨なのは、2011年10月25日に発生した、埼玉県警熊谷署に勤務する巡査長(51)が自家用車で起こした事故だ。この巡査長は通勤途中、時速90キロを超える猛スピードで走行し、右側から出てきた車に激突。その車両に乗っていた、当時50歳の母親と19歳の娘を死亡させたのである。
この事故に関しては、一審で禁錮1年4月、執行猶予4年という判決が下っているが、あまりにも軽すぎると言わざるを得ない。現職警察官が速度超過の末に、2人の尊い命を奪った行為は、「事故」ではなく“凶悪な交通犯罪”と呼ぶべきで、それに対して「執行猶予」というのは納得がいかない。
前出の今井氏は、警察官による交通事故が絶えない背景を次のように分析する。
「違反や事故などを起こした一般市民を逮捕する側の警察官が事故を起こすなど、本来、絶対にあってはいけないわけです。ところが最近は、団塊の世代のベテラン警察官が大量退職し、警察内部が緩んでいるという話も聞きます。そういった組織としての緩みが、こうした事故として出ているのかもしれません」
そもそも、警察の交通違反の取り締まりの目的は、「事故の防止」にあるはずだ。それなのに、一時停止をしなければならない危険な交差点などでも隠れて見張り、違反者を摘発する。
その場所が「一時停止をしなければ危険である」というなら、停止線に目立つように立ち、ドライバーに注意を促すべきだろう。
このような警察官の“点数稼ぎ”を奨励する取り締まり方法から見直すべきだが、それ以前に、これほど事故を起こす彼らに、われわれを取り締まる資格があるのだろうか。