そもそもの発端は、移転予定先(東京・豊洲)の東京ガス工場跡地から、発がん性物質などの土壌汚染が見つかったことに始まる。
火に油を注いだのが、ここでも当時の鳩山内閣だった。
「移転に傾いていた流れは、2009年7月の都議選で民主党が大勝してから一転。その後の総選挙でも民主党が圧勝し、当時の赤松農水相が『安全を確認しない限り移転を認可することはありえない』と語って振り出しに戻った。それが、引退するはずだった石原都知事が再選されたことで再び移転派が息を吹き返し、その後に丁々発止があって、ついに3月29日の本会議で移転関連費用を盛り込んだ2012年度予算案が賛成多数で可決されました」(都議会担当記者)
これで勝負あったというわけでもない。市場内約750の仲卸業者でつくる東京魚市場卸協同組合(東卸)が、これまた賛成派と反対派の間でつばぜり合いを演じているからだ。
東卸の山崎治雄理事長は移転には断固反対の立場で、東京都を相手に戦っている「豊洲汚染土壌コアサンプル廃棄(汚染証拠隠滅)差し止め訴訟」の原告団代表を務めている。つまり、都議会と現場の間でねじれてしまっているのである。
さらに混迷を深めているのが“破綻問題”だ。
「東卸もバブルに踊り、多額の負債を抱えて債務超過に陥った。そこで持ち出されたのが賛成派主導の『特定調停』です。結果、東卸は金融機関から約17億円の債務免除を受けている。現実には築地移転を強硬に迫る“石原利権”にありつこうという勢力が、反対派の横っ面を札束で引っ叩いて有利に運ぼうとしたのが真相です」(都議会関係者)
一方、市場そのものの存在意義が問われている現実を指摘する声もある。
「大手小売店は、既に産地との直接取引に変えています。日本の魚食文化を支えてきた市場や仲買いは、淘汰されていく趨勢です」(大手小売店関係者)
「築地」は、名実ともに消え行く運命なのか。