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破裂すると命に関わる! 血管にできる“こぶ”の脅威

 血管の“こぶ”は、50代から急に増えるといわれる。国内での正確な頻度は不明だが、海外では60歳以上の男性の5%以上が抱える病気との調査結果があり、米国では毎年20万人が新たな患者として発見されている。

 東京都多摩総合医療センター心臓外科担当医は次のように説明する。
「血管の“こぶ”は、身体で最も太い血管(大動脈)をはじめ、首(頸動脈)や下肢(膝まで)の動脈にできやすいといわれます。特に気を付けたいのは、お腹の大動脈に出来る腹部大動脈瘤、へその辺りから左右の足に向かう2本の中動脈に出来る総腸骨動脈瘤、それに膝の裏側にできる膝窩動脈瘤です。いずれも“こぶ”ができやすく、くしゃみなどで圧力がかかったりすると破れやすい。それが致命的になることもあります」

 なかでも大動脈のこぶは、一度できると、その主な要因となる高血圧や動脈硬化の治療をしても徐々に大きくなってしまう。2年前、俳優の阿藤快さん(享年69歳)の死因も腹部大動脈が破裂したためと報じられた。

「“こぶ”の破裂のリスクが高まった場合の対処としては、外科的な手術になります。まず、超音波やCT検査を行う。“こぶ”ができた形や角度などで破裂の危険度は異なりますが、腹部大動脈瘤が1年以内に破裂する確率は直径5センチで4.3%以上、6センチだと2割近くに上る。4センチ以上でも1.4%ぐらい破裂の危険性(死亡率3%前後)があり、5センチ以上か、半年で5㍉以上拡大した場合には手術を検討する場合があります」(同)

 腹部大動脈は、正常であれば直径およそ1.5〜2センチだが、同大動脈瘤の場合はその1.5倍以上に拡大する。ただし、腎臓から下の血管では個人差が大きいため、便宜上、直径3センチ以上を動脈瘤とみなしている。

 そもそも血管は、加齢や高血圧、糖尿病といった生活習慣病や炎症などによって硬く、厚くなる。ただ、その場合も一律になるのではなく、一部の血管壁の組織は逆に脆弱になるとされる。

 そんなところに圧力がかかると、血管がこぶ状に膨らむ。それに喫煙などによる酸化ストレスや、脂質などがたまった動脈硬化粥種、慢性炎症などが加わると、3層からなる血管壁の真ん中の膜を変性、破壊させ、破裂に繋がるのだ。
 大動脈は高い圧力で全身に血液を送っているため、いったん破裂すると大量出血となり、脳、脊髄、肝臓、腎臓など重要臓器への血流が滞る。破裂した場合の死亡率は80〜90%にも上る。

 では、大動脈瘤破裂で命を落とさないためにはどうしたらいいのだろうか。循環器系の専門医がこう語る。

「とにかく“こぶ”の破裂を避けることです。大動脈瘤は、一度できると縮小しないので、大きくならないようにするしかありません。ですから、早期発見がカギになるのです。しかし、大動脈瘤が神経を圧迫して声がかすれるなどの症状はありますが、その状態になるのは稀で、ほとんどが無症状なのです。その辺がくせ者。だから患者さんの多くは、別の検査時に偶発的に血管の膨らみが見つかるという状況です。特に50歳以降に“こぶ”の破裂が増えることを考えると、健康診断や人間ドックなどの検査を定期的に受けることが、早期発見につながりやすいといえます」

 しかし、この“こぶ”自体だと、多くの場合は痛くもかゆくもない。検査も超音波検査やMRI/CTなどの検査でなければ、ほとんど発見できないという厄介者だ。

 腹部にできた“こぶ”は、肝臓病や腹痛でお腹の超音波検査をしたとき、偶然見つかったという話を多く聞く。
 ただ、こぶが大きくなると、拍動を感じたり、身体の他から拍動する腫瘤に触れるようになる。そのため、周囲の組織を押し付けて腰や腹部の痛みなどを誘発することもある。

 さらに、“こぶ”が急に大きくなり血管壁が裂け始めると、腹部の激痛や拍動を感じるようになる。だが、その時はすでに外科的治療を受けなければ助からない状態になる可能性が高い。

★拡大を防ぐことが重要
 循環器系の研究を続ける医学博士の内浦尚之氏もこう語る。

「検査を受けた人が大動脈瘤と言われた場合、直ちに超音波などの慎重な経過観察となりますが、5センチ以上になりますと外科的治療が必要となります。その治療で成果が上がり、さらにステント(グラフト)治療で良好な成果が得られれば、死亡率は2%以下にとどまるというデータがあります。大動脈瘤は稀な病気ではありませんが、ただ、破裂すると助かりません。やはり早期な発見が重要ということです」

 さて、ここでステントグラフトについて触れておこう。ステントグラフトは、人工血管(グラフト)にステントという針金状の金属を編んだ金網を取り付けたもので、圧縮して細いカテーテルの中に収納したまま使う。腎臓から大動脈瘤まで1センチ以上の距離があり、かつ“こぶ”の頚部の角度も60度以下のものに使われるようになったが、最近ではより難しい治療でも使用されることが多くなった。

 前出の内浦氏はこう説明する。

「最近だと、両側の足の付け根を少し切開して、カテーテルを動脈内に挿入し、大動脈瘤の内側にステントを留置します。挿入されたステントはバネの力と血圧によって広がり、血管内壁に張り付けられて自然に固定されます。大動脈瘤は残りますが、ステントにより蓋をされたことになり、“こぶ”内の血流や壁への血圧によるストレスがなくなるのです」

 つまり、新しい血流路を確保することにより、動脈瘤を血流から遮断できるというわけだ。

「ステントを挿入すると“こぶ”は次第に小さくなる傾向にあります。また、縮小しなくても、拡大を防ぐだけでも破裂の危険性が低くなります」(同)

 動脈量が破裂してしまえば、「半分ぐらいは病院にたどりつけない」という話をよく聞く。運よく緊急手術を受けられても、成功率は6割程度だとされる。

 腹部エコーなどで簡単な診断もできるようになり、加えてステントグラフト治療でかなりの人の命が救われるという専門家は多い。

 いずれにしても、早期発見、早期治療が重要なのはいうまでもない。

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