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話題の1冊 著者インタビュー 山竹伸二 『子育ての哲学』 ちくま新書 820円(本体価格)

 −−この本は、2人のお子さんの子育てを通して書かれたのですか?

 山竹 子供を育てていくうちに、子育てに関する考えがまとまってきたというのはありますが、私はもともと心の病などに関心がありました。それを考える上で、どうしても幼いころの親子関係など、子育てが問題になってきます。
 実際に子育てをしてみると、周りからは子供が生まれ、幸せそのもののイメージで見られることが多いのですが、これがかなり大変で。自由が奪われて、子供を中心に人生が回り始め、自分というものが段々なくなっていく感覚なんです。今の時代、大抵の人は幼少期から自由を享受して、自分の進むべき道を自分で選び、比較的自由に生きていると思います。ところが、子供が生まれると状況が一変します。特にお母さんは自分の時間を持てなくなります。無論、子育てには喜びもありますが、子供はいつ何時、突然何をしだすかわかりませんので、かなりのストレスを伴います。そうした中で、育児不安などが大きな社会問題になっているのです。
 昔のような大家族であれば、家族の誰かが両親に代わり面倒を見てくれたかもしれません。また、地域コミュニティーがまだ健在であった時代であれば、近隣住民たちと協力しながら子育てをできたかもしれません。でも、現在は地域の絆も失われ、核家族化していますから、お母さん一人で育児をする環境になりやすいんですね。そうすると、不安やストレスで、どうしていいかわからなくなってしまうお母さんもいると思うんです。

 −−最近だと“イクメン”なんて言葉もあります。

 山竹 日本社会では、いまだに父親が育児を手伝わない面が、欧米社会と比べると多いですね。日本はどうしても母親ばかりが子育てをしがちで、一方の父親は「仕事が忙しい」などとあまり協力的ではない。ただ、仕事と育児のどちらが大変なんて比べられるものではないと思うんですけどね。
 でも、“イクメン”と呼ばれる若いお父さんたちを中心に、子育てに熱心になるのは良いことですし、地域の連携が取れないならば、一層、夫婦間の協力が重要にならざるを得ないとも思います。そうなると、お父さんの役割も大きくなりますが、そう簡単ではありません。たとえ育児をしたくても、残業が多く、育休を取得したくてもなかなか取れないからです。
 日本の会社側の価値観がまだまだ保守的なので、そこが変わっていかないとなかなか難しいですよね。
(聞き手:本多カツヒロ)

山竹伸二(やまたけ しんじ)
 1965年生まれ。著述家。哲学・心理学の分野で批評活動を展開。著者に『「認められたい」の正体』(講談社現代新書)など。

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