(58歳。弁理士)
A:適度な飲酒は、心血管疾患のリスクの低減に役立つことが知られています。そのメカニズムの1つとして、HDL(善玉)コレステロールの増加があると考えられています。
ただし、HDLが極めて高い場合は、むしろ心血管疾患のリスク上昇と関連することが最近報告されました。
LDL(悪玉)コレステロールが変性し、動脈硬化の原因になることはよく知られています。
ところが、HDLも酸化し、変性します。HDLは動脈硬化を抑制しますが、酸化、変性したHDLは動脈硬化を誘発します。
飲酒量と変性HDLの関連について、東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の平田匠講師らは、信州大学生理学教室の沢村達也教授らと共同で初の研究を行い、その結果を日本動脈硬化学会で報告しました。
●動脈硬化予防には中等量の飲酒が無難
その概要を紹介すると、飲酒量の増加はHDLの上昇と関連したものの、変性HDLとは関連していませんでした。
ただし、高飲酒量の人たちでは、有意ではないものの変性HDLの増加が見られました。
以上の結果を踏まえ、研究グループは、
「中等量までの飲酒に伴うHDLの上昇は変性HDLの上昇を伴わず、動脈硬化の進展には影響を及ぼさない可能性が示された」
との見解を示しています。
愛飲家としては、飲酒に伴うHDLコレステロールの上昇が「動脈硬化の進展には影響を及ぼさない」ではなく、「動脈硬化の進展予防効果を有するかどうか」が最大の関心事です。
とはいえ、現状では、飲酒に動脈硬化の進展予防効果を期待するなら、飲酒は中等量にとどめておくのが無難でしょう。
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牧 典彦氏(ほほえみクリニック院長)
自律神経免疫療法(刺絡)やオゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。ほほえみクリニック(大阪府枚方市)院長。牧老人保健施設(大阪市北区)顧問。いきいきクリニック(大阪市北区)でも診察。