野球・日本代表が常設され、2014年シーズンオフに『大リーグ選抜チーム』などと国際試合を行っていく旨は既報通り。NPBの収益拡大の柱としても期待され、12球団は合同会社による共同運営を決めるなど、いつになく一枚岩の結束を見せてきた。しかし、思わぬ横ヤリが入ってきたのだ。
「15年11月開催予定だった『プレミア12』を主催する国際野球連盟(IBAF)が、日本国内での開催を白紙にすると一方的に通達してきたんです」(NPB関係者)
『プレミア12』とは4年に1度、各国と地域が世界ナンバー1を決める野球の国際大会だ。大リーグ機構と同選手会が主催するWBCと企画意図は同じだ。WBC上位12カ国が出場するという。IBAFはWBCの中間年に行い、前哨戦的な意味合いとすることで、MLB側と“棲み分け”に成功した。そのIBAFが日本での開催を取りやめた理由は金だ。
「プレミア12大会には、プロ選手の出場が可能なので、当然ながら侍ジャパンが戦います。NPBはWBCで主催の米国だけが儲けることになった反省から、侍ジャパンの肖像権や協賛スポンサーの取り分までしっかりガードしています。IBAFはジャパンマネーが吸い上げられないと判断し、『台湾と日本で開催地を分散する』と言い始めたのです」(同関係者)
一方でIABFと世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は、野球とソフトボールの五輪復帰を目指している。復帰の可能性がもっとも高いのは、20年に行われる東京大会。日本国内で世界12カ国によるトップレベルの試合でファンが盛り上がれば、五輪関係者へのアピールになるはずなのだが、IBAFは絶好のアピール機会を自ら放棄したようなものだ。
「IBAFが日本での開催を取りやめたのは、WBSCの総会出席後でした。WBSCは五輪復帰を目指し、奔走しています」(スポーツ紙記者)
五輪復帰に関してIBAFとWBSCは、ほぼ一心同体のようなものだ。
「一方的とはいえ、IBAFの言い分は無下にできません。同会長のリカルド・フラッカリ会長はWBSCの会長も兼任していますので」(同関係者)
MLBも野球、ソフトボールの五輪復帰には関心を示している。五輪復帰が叶えば、世界中の有望な人材を見極めるための絶好の機会となるからだ。
だが、14年オフ予定の『侍ジャパン対大リーグ選抜』試合に関して、MLBは「来年、プレミア12があるのに、わざわざ」と、一歩引いた物言いをするようになった。
こうなるとIBAF寄りの米国が、二戦級か、マイナー選手しか派遣してくれないかもしれない可能性が浮上してくる。NPBはダルビッシュ、田中将大、イチローなど日本人メジャーリーガーも加えたトップ選手の来日を期待し、収益をもくろんでいただけに大打撃を受ける。
野球、ソフトボールの五輪復帰は、NPBにとっても切実な思い。最悪の場合、米国選抜チームとの試合は“見送り”ということになる。NPBとMLBとIBAFが利権を主張し合うだけでは、野球の国際大会に未来はない。