A:なんとなく気分が落ち着かないのは、自律神経失調症による気分の問題です。背景として、ストレスや多忙のために自律神経のバランスが崩れていることが挙げられます。おそらく、軽い不安感の表れでしょう。今後、仕事が減るのではないだろうかとか、それに伴って収入も減るかもしれないなどと、心配されているのではないでしょうか。心配を先取りし、不安に思うのは正常な反応です。
しかし、それが過剰に強くなると病気と診断されます。つまり、健常な範囲と病的なレベルは断絶しているのではなく、つながっているのです。
また、強い不安感は、ある状況に置かれる場合に起きたこともあります。例えば、新幹線に乗っていると不安感が強くなると訴える人がいます。精神的に状態が悪くなっても、新幹線ではすぐ降りることができません。
●気分の変調に漢方が効く
そのことを心配すると、不安感がより強くなるわけです。これを心理学では予期不安といいます。
それに対して現代医学の治療は、カウンセリングや抗不安薬の投与が一般的です。健常の範囲と病気の境目は判然としませんが、患者さんが訴える場合、とりあえず、抗不安薬を処方して様子を見たりします。
一方、漢方には昔から、ご質問の方のように、軽い不安感がある心の状態の改善に、加味逍遥散というぴったりの処方があります。この漢方薬は、少しイライラ感がする場合にも適しています。また、不安感とイライラ感に、さらにうつ症状を伴うことがありますが、その場合に適した漢方薬に甘麦大棗湯や柴胡加竜骨牡蠣湯があります。
ご質問の方も、もしもイライラ感やうつ状態を伴っているならば、この二つの漢方薬がお薦めです。
この他、イライラ感に用いる漢方薬に抑肝散が、また、うつっぽい場合に用いる漢方薬に香蘇散があります。
漢方薬は、このような自律神経失調による気分の変調の改善によく効きます。ぜひ、試してください。
興津 寛氏(アストラル八幡クリニック院長)
統合医療の名医。熊本大学医学部卒業。東京医科大学形成外科、帝京大学溝口病院皮膚科、中国での漢方研修を経て日本医科大学東洋医学科にて臨床を実践。現在、アストラル八幡クリニック(千葉県市川市)院長。