関 芸能界はこれまで、どこか特殊で手の届かない世界と思われていました。そういった古典的なアイドル像という価値観を持っている人には、嵐やSMAPはわかりづらいかもしれません。まずSMAPについてですが、彼らはそれまでのアイドルグループとは一味違ったんです。メンバー5人のそれぞれの個性を生かし、それまでのアイドルのように歌だけなく、ドラマやバラエティーもできる。キムタクのようにカリスマティックなアイドルの系譜にのっとるメンバーもいれば、一方で中居正広さんのように庶民的で、これまでのアイドル像を崩すようなメンバーが同じグループに同居しているのがSMAPの面白みだと思うんですね。芸能界という特殊な世界を保持しつつ、それを視聴者が親近感を持てるようにしたことが画期的なところです。一方の嵐は、そうしたSMAPの正統な後継者でありながら、それすら否定し、古典的なアイドル像をぶち破ったところに嵐の嵐たるゆえんがあると考えています。気がつかないうちに、読者の皆さんも嵐のメンバーを日常生活で目にしているはずです。例えば彼らは、嵐と名前のつく冠番組に二つ出演していますし、相葉君は動物バラエティー番組に、櫻井君はニュース番組にキャスターとして、それぞれ出演しているだけでなく、メンバーはビールや自動車、航空会社などのテレビコマーシャルに出演している。ですから、メンバーの名前は知らなくても、知らず知らずのうちに嵐は空気のようにいつも隣にいる「身近な」存在になっているんです。
−−確かに日常生活に入り込んでいますね。こうした身近な存在が主流になっているのでしょうか?
関 昔ならカリスマティックで顔のきれいな、芸能界という自分とは別の世界への憧れがアイドルの在り方の一つでした。しかし、現在のAKB48にしても嵐にしても、可能性としては誰にでもなれるポシビリティーがあり、チャレンジできるのが重要だと思うんです。そういう状況の中で、自分はたとえアイドルを目指していなくても、得意分野で頑張れば自分なりに何かできるのではないか、という達成感のようなものを今のアイドルは示しているし、ファンはそれで元気づけられる。全く別の世界の人が輝いているのではなく、共感できるアイドルが活躍することで自分も頑張ろうと思う。だから、応援しがいがあるんだと思います。
(聞き手 本多カツヒロ)
関修(せき おさむ)
1961年、東京生まれ。明治大学法学部非常勤講師。専門はフランス現代思想、セクシャリティーの視点から見た文化論。ジャニーズウオッチャーの第一人者としての声もある。