search
とじる
トップ > その他 > 本好きオヤジの幸せ本棚(78)

本好きオヤジの幸せ本棚(78)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『落語家の通信簿』(三遊亭円丈/祥伝社新書 882円)

 落語家が同業の落語家を論じる。と書くと、まあよくあることだ、と思う人もいるだろう。しかし、それはテレビのトーク番組などで披露されるにとどまるのが普通であって、文章の形で真正面から論じる本は珍しいのではないか。
 著者の三遊亭円丈は1944年生まれで1978年に真打昇進。今やベテランの位置に立っているが、かつて'80年代初期、テレビの演芸番組に頻繁に露出していたころの激しく、斬新な姿をはっきりと記憶している人は少なくないはずだ。
 着物にローリング・ストーンズのベロ・マークなどポップなワッペンをいくつも貼り付けた奇抜な外観、そして口から飛び出すのはまるで小説のようなドラマチックなストーリーとギャグの炸裂。従来の落語家とは一線を画する新作落語の旗手として注目を集めた。そうした姿勢はもちろん、クリエーティブな表現を目指す知性あってのものだった。なので、彼が文章の形で同業者を論じることができたのは当然といえる。
 師匠である六代目圓生から談志、枝雀、現役バリバリの喬太郎と、あらゆる落語家を分類し、芸の特徴を分析する。時に愛情を込めて、時に辛辣に。とりわけ芸人の心の奥に隠している闇の部分へ迫っていくところは秀逸で、著者の深い人間観察眼がうかがえる。
 これ読まずして落語は聴けない、と思わしめる本が誕生した。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『あまちゃんメモリーズ』(文藝春秋・1365円)

 歴史的な傑作となったNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』。ドラマの完結から1カ月、本作の魅力と意義を、各界の“あま猛者”たちがM3ALNSP(みなさんのあまロスをなんとかすっぺ)会を結成して贈る、究極の「あまちゃん本」がついに完成!!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 『明日の友』(婦人之友社/630円)は、中高年向けの暮らしの情報と健康がテーマの隔月刊誌。最新号では「これからのお墓」と題された特集を組んでおり、興味深い。
 目を引いたのは読者アンケート。40代以上の中高年を対象に「入るお墓はありますか?」と調査したところ、34%が「ない」と回答。「ある」と答えた人の中でも「婚家の墓に入るにはためらいがある」というご婦人や、「自然葬に関心がある」、共同供養塔と呼ばれる「合葬墓を検討中」など、墓のスタイルが多様化しつつあることも示唆している。
 中には墓の継承者を必要としない樹木葬を選び、ペットと共に入ることを決断した78歳女性の例や、気になる費用の目安など、意外と知らない知識が満載だ。
 一読して思うことは、生前に自分の意志をしっかり家族に伝えておくことの大切さだろう。まだ先のことと思わず、お墓の準備は今からしておくべし。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

その他→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

その他→

もっと見る→

注目タグ