この“事件”で、せっかく解散・総選挙ムードだったのが、すっかり頓挫。自民党には、「麻生不信」が国民に根強いとの懸念がある。これを利して、来たる総選挙を有利に運びたかった民主党だったが、小沢の秘書の逮捕で「民主党はホップ・ステップ、肉離れ」(民主党関係者)になってしまった。
小沢は自民党を飛び出してから、これまでにいくつ政党、政策集団を作ったことか。これらはすべてホップ・ステップ、肉離れだった。
「今度の西松建設の件でも、同じパターンになるんじゃないかな」と小沢をよく知る政界関係者は、小沢の“肉離れ”を危惧する。
あれほど「国会を解散して、国民に信を問え」と民主党と事実上、“会派”を組んでいた社民党や国民新党などがどう動くか、注目されている。
「社民党は小沢頼りですからね。小沢の民主党の勢いに便乗して議員増を考えていた。ところが、今回の予期しない“スキャンダル”に党首の福島瑞穂は真っ青になっているし、国民新党の亀井久興幹事長は『共倒れになるのはごめん』と一線を画し始めているほどだ」
小沢の不祥事から国会内外が急に騒々しくなったわけだ。
自民党も民主党も、総選挙の議席を勘定をし始めていたが、民主党内には「この騒ぎが静まるまで、首相(麻生太郎)は解散しないでほしい」と、少し前の強気の発言はどこえやら。すっかり萎えてしまっている。
それどころか、小沢と一線を画す民主党議員の間からは、代表を辞めてもらわないことには選挙に勝てないという声が公然と出始めている。選挙区に帰ってみると、民主党への体感温度が極端に変わってきているからだ。
「押せ押せの一点張りだった民主党は守りに入った。これでは選挙で圧勝どころか…」と、ある民主党関係者は言葉を濁すほど。
自民党の細田博之幹事長は「これまでは(民主党の)言うことを黙って聞くしかなかった。じっと我慢の子だったけど、小沢の一件で押せ押せムードに反転した。この機を逃すと選挙に勝てない」と“敵失”に乗じようとしている。
選挙に勝ったほうが天下を取る。細田が「敵失を利用してはいけない」と言っていたが、千載一遇のチャンスに前言を翻したことになる。
ねじれ国会で、予算や法案が何ひとつスムーズに通らないことに、細田は常にイライラし通しだった。
「小沢の問題で民主党が今までのような強硬な抵抗はできなくなる。国会が円滑に運営できるようになってから、堂々と選挙しよう」と細田はかなり強気な発言をし始めた。
ホップ・ステップ、肉離れの民主党が立ち直るまで、まだかなりの時間が必要だろう。麻生はいつ衆院解散・総選挙に動くのか。ここ2、3週間で決断を出す可能性は高い。(文中敬称略)