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話題の1冊 著者インタビュー 新見正則 『患者必読 医者の僕がやっとわかったこと』 朝日新聞出版 1500円(本体価格)

 −−最近は、ランニングやウオーキングを習慣にしている人も増え、テレビや雑誌にも健康に関する情報が溢れていますが、こうした状況をどう見ていますか?

 新見 テレビ業界は視聴率を重視するあまり、どうしても何を食べたらいいか、や、どんな運動をすればいいかと一点主義になりがちです。ただ、彼らもそれが仕事ですから致し方ない部分もあります。だから、視聴者がそのことをわかった上で、そうした番組を見て、信じ過ぎないことが大事だと思います。
 最近流行しているジョギングにしても、しっかりとトレーニングを積んで体をつくってから、もしくは走り方をきちんと習ってからならいいですが、突然始めない方がいいですね。ジョギングでは、着地時に3倍の体重が掛かりますから膝を壊します。自己流で皇居の周りを走る人の多くが膝を壊しています。
 また、よく「これを食べると体に良い」という情報があります。それを別に否定はしませんが、本当に体に良いかどうか、まずは自分で試してみるのがいいですね。試さずに信じてしまうから、効果がなくて腹が立ったりしてしまうんです。

 −−人によって、合う、合わないがあるということですね。

 新見 それは医療にもいえて、多くの人を診療していると、同じ治療をしても治り方が違い、人って一様じゃないんだなというのは多くの臨床医が感じているはずです。人は遺伝的にも環境的にも、一人ひとり異なるので、医療は一律ではないんです。明らかに間違っている極端な治療法を除けば、実は医療はグレーゾーンがとても広いんです。

 −−健康になるためにお酒やタバコをやめるかどうかは、本誌の読者にとっても一大事だと思います。

 新見 体に悪いことは確かですが、人間はリスクを抱えて生きていますから、お酒やタバコをやめない選択肢も当然あると思います。健康になりたいなら、酒やタバコをやめて、適正時間寝て、ストレスを減らし、バランスよく食べることに加え、外出すれば交通事故に遭うリスクがありますから、家の外へ出なければいいんです。交通事故で1カ月以内に亡くなる人は年間1万人。それだけの人が年間亡くなる病気は結構あるんです。
 だから、タバコだって悪いと思って吸えばいいし、お酒も悪いと思って飲んで、自分である程度リスクを背負って生きればいいんじゃないでしょうか。外で美味しい物も食べず、家で出前をとって食べる生活が良いか悪いかですよね。
(聞き手:本多カツヒロ)

新見正則(にいみ まさのり)
1959年、京都府生まれ。帝京大学医学部外科准教授。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。2013年、イグ・ノーベル賞医学賞を受賞。

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