中でも世界一の長寿国となった日本では、老後の生活も長くなり、死亡率は低いものの糖尿病などの合併症でアルツハイマー(認知症)を含む後遺症に悩む高齢者が、増加の一途をたどっている。そのため厚労省は生活習慣の対策転換に迫られており、国民にもその重要性を喚起している。
健康診断で糖尿の数値が基準値をオーバーしても、一回ぐらいなら大丈夫と軽く考えるかもしれない。しかし、それが蓄積すれば危ないということを肝に銘じておかなければならない。
Kさん(48歳・男性)は10年ほど前、健康診断から空腹時血糖値が110mg/dl 前後をウロウロしており、ここ数年は120近くに上昇していた。しかし、空腹時血糖値の正常値は110未満のため、それほど悪い数値ということはなかった。
「自覚症状は何もないから、数値が10くらいオーバーするのは無視していたんですよ」
と言うKさんはグラフィックデザイナーで、納期の前は徹夜仕事が続く。毎年受けている春の健康診断シーズンは、なぜか納期と重なることが多く、わざわざ精密検査を受ける余裕もなかった。結局、健康診断の結果を無視して食事も運動もおろそかな生活を続けていたところ、昨年春、体の異常を感じたという。
「寝る前になると脚が痺れるようになり、正座の後のピリピリ感というか、無数の虫が脚をはっているような感覚もあった。とにかく嫌な感じでしたが、最初のうちは我慢して寝ていたんです。でも、だんだん眠れなくなって睡眠外来を受けたら、その痺れは糖尿病の合併症の神経障害によるものでした」
食事も不規則、運動もほとんどしないサラリーマンにとっては他人事ではない話だが、Kさんも怖くなり内科で精密検査を受けた。血糖値は一目瞭然で糖尿病と診断されるほど上昇。腎臓の検査数値も悪化し、合併症の腎症も発症していた。
「糖尿病を放置したり治療が不十分だと、手足の神経や自律神経などがやられる『神経障害』や、腎臓機能が低下する『腎症』、視力低下を余儀なくされる『網膜症』の順で合併症を起こすと考えられます。また、最初に発症する神経障害発症までのタイムリミットは最短で約3年です」(専門医)
Kさんの網膜症は、失明寸前というほどではなかったが、失明予防のレーザー治療を受けたという。
糖尿病は、合併症がある点で他の生活習慣病と大きく異なる。しかも三大合併症のどれもが重く、その先の末路にあるのは心筋梗塞や脳卒中という重大病だ。
また前述の通り、合併症の後遺症により、アルツハイマー病(認知症)の患者も増えていることが判明し注目を集めている。