A:梅雨は湿度が高いので、湿気のために胃腸の機能が低下し、体調を崩す傾向があります。食欲不振や胃もたれ、下痢を引き起こし、その結果、体はだるくなり、活力が低下します。
原因としては、暑さも忘れてはいけません。つまり湿気と暑さと胃腸機能の低下が3点セットとなり、梅雨時の体調不良がもたらされるのです。
湿気によって胃腸障害がもたらされると前述しましたが、胃腸の機能がよくないと湿の病(水分代謝の異常)を起こしやすいという特徴があります。
●湿気と胃腸虚弱が相互に影響
つまり、胃腸の弱い人は梅雨時に体調を崩しやすいわけです。ご質問の方は、このタイプと思われます。
余談ですが、昔から端午の節句(菖蒲の節句。現在の子供の日)には菖蒲湯に入る習慣がありました。菖蒲には、邪除けの効果があるといわれています。武士は尚武を尊び、尚武と菖蒲をかけたことが菖蒲湯の始まりだそうです。
旧暦(太陰暦)5月5日は、現在の太陽暦では6月24日にあたります(平成24年)。つまり、端午の節句は梅雨の真っ只中でした。
菖蒲は香りが高く、湿気を取る作用があるといわれています。
●胃腸にやさしい食事を
梅雨時に体調不良が進むと夏バテになります。暑さで体が消耗し、さらにクーラーにあたることによって本格的な夏バテになります。
この梅雨時に体調を崩さない対策としては、冷たい水を飲み過ぎないようにしましょう。湿の病は、過剰に水分が体内に溜まった状態です。そうなると、胃腸の機能を低下させます。
湿気対策としては、エアコンの除湿を利用して、室内の湿気を取り除くようにしてください。
体がだるいときには、精がつくものを食べると良いといわれます。その代表的な食品がウナギでしょう。しかし、漢方的にはそれは間違いです。胃腸の機能をもっと低下させるのです。
食べるなら、消化がよい食材や料理を選びましょう。たとえば、白身の魚と豆腐の煮付けがあります。純和風ともいえ、脂っこくなく、あっさりしていますからお勧めです。胃腸に負担がかからない食事がいいのです。
また、十分に睡眠をとることも忘れないでください。
三浦於菟氏(東邦大学医学部医療センター大森病院東洋医学科教授)
東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。日本医科大学附属病院東洋医学科助教授を経て現職。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。