「将来の優秀な種牡馬、繁殖牝馬を選定するため」
したがって種牡馬になれないセン馬(去勢された牡馬)は、ダービーに出走することはできない。
こういった競馬界の基本的な構造から考えれば、現役時代にレースで稼ぐ賞金よりも、種牡馬入りしてから動く金額の方がはるかに大きいのも、ある意味自然なことなのかもしれない。
「実際、日本でも欧米でも、競走馬として超一流の成績を収めた牡馬は、まだまだ一線級での活躍が十分に可能だと思えたとしても、3〜5歳といった早い年齢で現役を退き、種牡馬入りするケースが圧倒的です」(スポーツ紙競馬担当記者)
昨年暮れ、ラストランとなった有馬記念を8馬身差の圧勝で制し、競走馬として有終の美を飾ったオルフェーヴルも、今春から種牡馬となり“第二の馬生”を歩み出す。
3歳時に皐月賞、ダービー、菊花賞のクラシック三冠レースと有馬記念に優勝、古馬になってからも宝塚記念、2度目の有馬記念と、GI競走を六つ制したオルフェーヴルが、およそ3年4カ月の競走生活の間に稼いだ賞金は、2年連続2着した凱旋門賞などフランスに遠征して得た分も含めて、14億7000万円強。
一方、種牡馬となったオルフェーヴルの初年度の種付け料は、受胎確認の条件付きで“一発”600万円。
仮にディープインパクトの初年度と同じように200頭以上の繁殖牝馬に種付けし、そのうち8割程度に受胎が確認されれば、このシーズンだけで10億円近い種付け料を稼ぎ出す計算になる。受胎率などに問題がなく、来シーズンも今年同様の種付け料が設定されるとしたら、オルフェーヴルはわずか2シーズンで競走馬時代の獲得賞金を上回る金額を種牡馬として稼ぐことになるのだ。
「もちろん、早逝してしまったり、何らかの理由で授精能力を喪失してしまったりする危険性もありますが、20歳前後まで第一線の種牡馬として活躍することは十分に可能。現在6歳と若いオルフェーヴルだけに、今後10数年に及ぶその経済的価値は、まさに莫大なものとなります」(同・記者)
スーパースターホースとして大活躍した競走馬が種牡馬となる場合、シンジケートが組まれるのが一般的だ。例えば、オルフェーヴルより6歳上の三冠馬であるディープインパクトが種牡馬入りする際には《8500万円×60株》の総額51億円でシンジケートが設立された。シンジケートの会員になれば、ディープインパクトが種牡馬である限り、毎年の種付け権利が保証される。また、会員以外の生産者がディープインパクトの種付けをすることも可能となる。