「消防庁の発表によれば、昨年7〜9月に熱中症で救急搬送された患者の44.1%が高齢者。齢を取ると高体温になり熱中症になりやすいことは経験則からわかっていましたが、科学的な裏付けが十分ではなかったのです」(医療記者)
実験では、年齢に応じた血流量などのデータを入力した人体モデルを再現し、気温が上がった際の体温上昇や発汗量を調査。気温35℃と37.5℃、40℃で65歳と25歳の体温と比較した。結果、65歳の高齢者が汗をかき始めるのは25歳より3℃高いことが判明。そして、体温も気温35℃と37.5℃で0.3℃、40℃で0.25℃、25歳より65歳が高かった。ちなみに、気温30℃以下の場合、高齢者も若者も体温は上がらず、一定に保たれていたという。
高齢者といえど平均寿命が83歳の日本では、65歳もまだまだ活発な年齢。しかし、世田谷井上病院の井上毅一理事長が言う。
「65歳になると熱代謝が悪くなり、体温が上がってもあまり汗をかかず、体が乾きます。高温高熱の条件でエネルギーの消費量が多い仕事をしたり運動をすると、代謝が悪いため熱中症になりやすい。体の力が抜け、ひどい場合は錯乱を起こすこともあります」
平田准教授も「65歳の人にとっての気温35℃は、25歳の人にとっての40℃に相当する」と警告している。特にコンクリートに囲まれた都心などでは、アスファルトの反射熱で街は熱気が渦巻く。今回の発表は、年齢によって改めて夏の過ごし方を考えさせられる結果だろう。