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徹底検証・徳川埋蔵金の真実 トレジャーハンター・八重野充弘 第15回 金山の奥に隠された千両箱(後編)

 15個の千両箱が、群馬県片品村山中の廃坑になった金山の坑道の奥に眠っている…。それは幕末の徳川の御用金の一部で、総額は時価約30億円と推定される。
 その情報をキャッチしてから15年後の2007年、高橋喜久雄と筆者は、中断していた調査を再開することを決意した。きっかけは、人づてに高橋のもとへ届けられた、情報源である萩原徴翁の遺言だった。
 「仲間と2人で坑道の奥にあった千両箱を見つけ、うちの一箱だけは取り出したが、相棒が深い縦坑の底に落ち、助けることができなかった。まずは彼の供養を頼みたい。そして、残り15個の千両箱を取り出して、世の中のために役立ててほしい」
 筆者は驚くと同時に、全ての疑問が氷解した。断片的だった萩原翁の話が、1本につながった。つまり、宝を見つけたのは彼自身であり、片品村の幕末の目撃談の通りなら千両箱は16個のはずだが、なぜ最初から15個と言っていたのかもはっきりした。そして、周囲の誰もが不思議に思っていたボランティア活動の資金を、どのようにして調達したかもわかった。

 萩原翁はネパールに学校を5校寄贈し、国王から感謝状をもらっている。以後もずっと同国の子供たちに文房具を贈り続けてきたことは、筆者もよく知っている。
 高橋の長男はあるとき、唐突に次のような話を聞いた。
 「金は国内で現金化するのは難しいから、知り合いのいる台湾に持ち込んだ。飛行機では運べないので、長崎から船で行った」
 また、金井沢への入り口にあたるところに掘ったて小屋を建てて、ときどきそこで寝泊まりしていたが、どうやらそこが小判を溶かして延べ棒にする作業場でもあったようだ。小判としての価値の方がずっと高いのでもったいない話だが、幕末近くに発行された小型で金品位50%強の小判だったとしても、金の総量は6〜7キロになるから、現在なら3000万円前後、金価格がもっと安かった昭和30年代(1箱回収したと思われる年代)でも400万円前後にはなったはずだ。ボランティア資金としては十分だろう。

 翌2008年秋、われわれは行動を開始した。課題は、十分な資材を現場へ運搬できるルート探しだ。
 昔は南側から牛を引いて入ることのできる道があったらしいが、そこが現在はスキー場のゲレンデになっている。スキー場の支配人に話を持ち込んだところ、地図上では現場までわずか200メートルほどのところにゴンドラの駅があり、そこまでは雪上車で荷物も人も運んでくれるという。願ってもないことだ。
 ところが、下り斜面は想像を絶するほど急で、背丈以上の熊笹にびっしりと覆われていて、かえって難しい。結局、従来のルートを使うしかないと判断、翌年の雪解けを待って沢に丸木橋を架け、垂直に切り立った女滝の脇の崖に、4段にわたってロープと縄ばしごを取り付けた。

 幸い、筆者の方で十分な人手を確保することができたので、作業は順調に進み、9月中旬、その年の10回目の調査の際に、ようやく坑道の入り口が開いた。そして9月末には、坑道の奥に萩原翁から伝えられた通りの水を満々と湛えた深い縦坑を見つけ、われわれはその時点でターゲットにたどり着いたことを確信した。
 翌週には、そこに眠っている人のために線香を一束持って入り、その次の週には体力のあるメンバーを15名集め、千両箱を1人1個ずつかついで、一気に下山する手はずを整えていた。また、積み上げた千両箱を前に祝杯をあげる一同の写真を撮ってもらうため、プロの写真家に同行を求めてもいた。
 しかし、縦坑の底には遺体も千両箱もなかった。たまっていた10トン近い水を手動ポンプで抜いた後、底に堆積した砂を岩盤に達するまで掘ったが、何も出てはこなかった。

 その理由をどう説明すればいいのか、しばらくは誰も答えられなかったが、一冬を越したころ、次のような推理を仲間内で共有するようになった。
 萩原翁の相棒氏は縦坑の中で息を吹き返し、一人で千両箱を回収して坑口まで運んだが、そこで力尽き、さらに斜面の崩落が起こって埋もれてしまった。実際、入り口が開いたといっても、一人が腹ばいになってやっと潜り込める程度で、いまだ内も外も大量の土砂に埋もれたままである。
 そこで、2年後に2回通って土砂を取り除く工事を行ったが、このまま続けると大規模な落盤や斜面の崩壊が起こりそうなので、目下、工法について慎重に検討しているところだ。
(完)

八重野充弘(やえのみつひろ)=1947年熊本市生まれ。日本各地に眠る埋蔵金を求め、全国を駆け回って40年を誇るトレジャーハンターの第一人者。1978年『日本トレジャーハンティングクラブ』を結成し代表を務める。作家・科学ジャーナリスト。

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