前出の藤田さんが言う。
「土地代や建物の建築資金は大きな問題です。私の場合、住宅ローンも、銀行はなかなか貸してくれませんでした」
とにかく資金をかき集めようと、できる限りの手段を講じたとか。そんな努力が実って、最終的には事業用の融資を受けることができ、何とか着工したが、資金の余裕など全くなかった。
「でも、田舎は物価が安いし、お金を使うこともあまりない。それにここは、夏はエアコンいらずだし、冬は薪ストーブなので光熱費が非常に安く済みます。食べていければいいと思えば、このカフェの収入で十分に生活を楽しめます」
鈴木さんもお金については苦労の連続だ。移住した当初は、遊休農地を無料で借りたが、生活費や作物の種や肥料代は現金で支払う。
「年に300万円は必要です。農家にとってこれは大変な金額ですよ」
農業を志して足かけ11年。今年、やっと目標をクリアできる目途が立ったという。
そんなお2人のみならず、“脱都会”“田舎暮らし”に憧れる人は年々増え続けている。しかし、自ら描いた夢と現実の違いに戸惑うばかりか、挫折してしまう人たちも少なくないのが実情のようだ。
それでは、どうしたら失敗することなく、田舎暮らしになじみ、満喫できるのだろうか。
関東圏だけでなく、中京圏、関西圏の人たちにも人気の信州。その中でも八ヶ岳や南アルプスをはじめ大自然の景観を背景にできる茅野市で、多くの移住希望者の相談に乗ってきた『蓼科グリーンビュー開発株式会社』の朝倉寿美子さんに話を聞いた。
「この周辺で生活するなら、年間で最低200万円は必要です」
薪割りや草刈りは自分でやるなどの節約も必要。また、家計簿をつける主婦の視点が欠かせないそうだ。
なお、この金額は前出の藤田さんや鈴木さんなどのケースを除き、家庭菜園程度を楽しみながらのんびりと過ごす場合のものだ。