気に入らないことがあると、現代の若者はこの台詞をよく使う。だが、本当に吐き気をもよおすようなムカつきがあったならば、当のご本人は“病気の前ぶれ”があったと見るべきなのだ。では実際、吐き気の陰にはどんな病気が潜んでいるのだろうか。
「吐き気や嘔吐は、体全体が不調だったり、頭がボーッとするとき、気分が悪いときなどさまざまな場合に現れます。吐き気が起こるのは、(1)頭部や目(2)消化器(3)心臓(4)腎臓(5)その他の臓器などが関連しているので、吐き気とともに何か他の症状があるはず。『えっ、これが?』というような症状が実は重要だったりします。例えば、足にむくみがあり嘔吐があれば、危険信号となり、腎炎が見つかったケースがある」
こう話すのは、春山克郎先生(元国家公務員共済組合連合会立川病院外科医長)だ。
春山先生の著書『吐き気』(グロビュー社)によると、嘔吐にはこんな病気が潜んでいるという。
「頭蓋内圧が亢進することにより、嘔吐神経を刺激して嘔吐を起こすことがある。これは、頭蓋内圧を上げるような脳腫瘍や脳出血などが原因で、手足の麻痺やけいれんなどがあったり、物が二重に見えたりする。また、眼圧の上昇やメガネの度が合わないといった目が原因だったり、耳鳴りといった耳が原因だったりすることで嘔吐が起こることもあるのです」
普通、嘔吐というとすぐ連想するのは、消化器関連の病気だろう。胃や腸がやられたか、などと思ってしまうはずだ。
食べた物は口→咽頭→食道→胃・十二指腸→空腸→回腸→盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→直腸→肛門と廻り、消化吸収した残りが便となって排泄される。
消化している間にどこかの過程で障害を受けると、口に近い側の消化管の拡張が起きて嘔吐をもよおすようになる。たとえば、食道に通過障害があれば、物が飲み込みにくくなったり、飲み込んだ物を比較的短時間のうちに吐いたりする。
一方、小腸や大腸の閉塞でも嘔吐を起こす。大腸に大量の摂取物の停滞があると便臭を伴った物を吐くことがある。
春山先生は消化管のどの部分が原因かを究明するときに、腸の長さを覚えていて診断するのだという。
つまり、どこまで食べ物が通過したかの消化具合で故障の器管がわかるというわけだ。
主な大人の消化器の長さは、食道が25センチ、十二指腸が25〜30センチ、小腸はなんと6〜7メートルもあり、大腸は1.6〜1.7メートルだ。