だが暑い日などは、汗もかき、ノドの渇きを覚え、飲み物(水)が欲しくなる。その場合でも、1〜2リットルをこまめに摂るだけで済む。目安はティーカップ1杯(約150cc)程度を1〜2時間ごとに摂るのが理想的で、水分はそれだけで十分に満たされるはずだ。
ところが、人の体には目に見えるメジャーは備わっていない。その時の状況や感覚で、水分の過剰摂取をついついしてしまうため、さまざまな害(症状)が生じ、医療機関に駆け込む人が増えている現実がある。
「患者さんの一例を出しますと、ごく普通の中年サラリーマンの方が、速足で歩くと動悸がして息苦しいと訴えてきた。診察すると不整脈の症状があるので、問診を続けていきますと、水の摂り過ぎと判明しました。暑いので氷を入れた冷たい水を一気状態で飲んでいたそうです」(浦上院長)
本来、飲んだ水は小腸で体内に吸収され、血液として体内を循環し、最終的に尿として排出される。それが、一気に大量の水を飲んだり、何回も必要以上に飲んだりすると、循環血液量が一時的に増える。その増えた血液を体内循環させるのに、心臓は通常以上の力で働き続け、全身にくまなく行き渡るよう血液を送り続ける作業をする。その結果、血圧が上がり、脈も速まり胸が苦しくなる。これが不整脈の症状で、放置すれば血栓を起こし、心筋梗塞や脳溢血、脳梗塞などの重大な疾患に陥る。
「こうした疾患の素因として、もうひとつ重要な事は、多量に水を飲み過ぎると、本来の塩分濃度が薄れてしまい、それによって“自発的な脱水”という脱水症状が起きてしまう。これも怖いのです」(大学病院・循環器科医師)
つまり、猛暑日は汗を多量にかく。発汗で消失した水分を補うために多飲してしまうと、血液(白血球と0.9%の食塩)の塩分濃度が薄まり、それ以上の水分吸収を拒む“飲水停止”状態になる。これを医学的に「自発的脱水」症ともいうが、水分を摂り過ぎると真逆な脱水症を誘発する、信じられないことが起きてしまうのである。
過剰に摂り過ぎ、バランスを欠いた余分な“悪い水”は、腎臓という器官の働きによって、細胞の外にはじき出す。それが下痢や嘔吐、排尿である。
「とにかく体内の水分量が多くなると血圧が上昇します。また、寝る前に過剰な水分を摂ると排尿のために目覚め、睡眠が妨げられる。そのことによって脳梗塞などの発症率が高まります。そうしたことを常に考えていてほしいですね」(医療関係者)
水分補給も、日常的には普通の水でいいが、高温や発汗が多い時には、塩分を含んだミネラル水をお勧めする。
効果的な食事や入浴、運動などで「腎」を強化し、「余分な水分を出すこと」も大切だ。