「いずれも体長2〜3メートルのカズハゴンドウイルカで、多くは体じゅうが傷つき衰弱していました。カズハゴンドウはイルカの中でも小型の方で、通常は深場を泳いでいます。海岸では地元ダイバーや水族館関係者が海に戻そうとしたり、イルカの肌が渇かないように水をかけ救出にあたっていましたが、やはり4年前の出来事が話題に上がっていました」(地元記者)
4年前の3月4日夜。茨城県の鹿嶋市の海岸で、52頭のカズハゴンドウイルカが打ち上げられており、その状況が酷似している。今回、水族館関係者などは、「餌を追いかけている最中に浅瀬に迷い込んでしまったり、地形や海流などの影響で流れ着いてしまった可能性もある」としているが、巨大地震の前後にイルカの大群が座礁した例は、これまでに何度も起きている。
「'95年の阪神淡路大震災の2日前には神戸に87頭が座礁している。2011年、東日本大震災の直前の2月11日に発生したニュージーランドのカンタベリー地震(M6.1)は日本人留学生を含む185人の犠牲者が出ていますが、この2日前にも現地で100頭を超えるイルカが打ち上げられている。他にも、イルカやクジラが巨大地震の前後に異常な行動を取る例があるため、専門家の間でも因果関係が注目されているのです」(サイエンスライター)
海洋生物の異変を巡っては、昨年来、本来は小笠原諸島近海に生息するはずのダイオウイカが鳥取市沖で捕獲されるなどの現象が相次ぎ、地震との繋がりを心配する声が後を絶たない。
「実は4年前も、深海魚のリュウグウノツカイやサケガシラ等が各地で相次ぎ漂着し捕獲されている。これらは水深数百メートルに生息しているため、極めて珍しいことです。例えば深海で海底火山が噴火して熱水が噴出したり、海底地震によって地底が変形するなどの異変が起きている可能性は十分に考えられます」(同)
深海魚の例では、'04年6月にも福岡県沿岸でサケガシラが10匹以上捕獲され話題になったが、翌年3月には福岡県西方沖地震(M7.0)が発生している。
生物も含め、地質的、物質的に大きな地震の前触れとして発生しうると言われる異常現象を「宏観異常現象」と呼び、主に次のようなものが挙げられる。
・犬が興奮して吠え立てる。
・猫が柱を繰り返し上る。
・カラスが集団で消える。
・魚が大量に獲れる。
・ミミズが這い出す。
・血のような色の赤い雲など“地震雲”が現れる。
・井戸が枯れる。
・突然テレビの画面が乱れる。
・テレビのリモコンが利かなくなる。
これらの現象について、琉球大理学部名誉教授の木村政昭氏が説明する。
「宏観異常現象が地震の前兆現象となることは、あり得ると思います。ただし、すべてが地震と繋がっているわけではなく、他の原因でも起こりうるということ。結局、現時点では後で考えればこういうことがあった、という見方しかできません。ただし、イルカは音に非常に敏感で、とりわけ低周波地震を感じるといわれてきました。今回も何らかの異常を感じ取って行動を起こしたのでしょう」
武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏にも聞いてみよう。
「地震予知において、動物の異常な行動や空が光る現象、地震雲などさまざまな現象がありますが、学問的には関係性がわかっていません。とりわけ海洋生物は、センサーが我々より一ケタ以上敏感なため、そもそもわからないことだらけです。確かに、三陸海岸で大地震が発生する前にイワシが大量に獲れることがある。イワシの場合、海底に流れる微弱な電流に敏感に反応する可能性もあるのですが、なぜそういった動きになるのか等は、はっきりしていないのです」