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線虫・アニサキスがん発見の可能性

 「驚くべき発見のきっかけとなったのは、アニサキスによる食中毒でした。佐賀県内の病院でサバにあたった食中毒患者の胃の中を調べたところ、線虫のアニサキスが寄生していた場所にがんを発見したのです。研究成果を発表した九州大の実験で使われたC・エレガンスという線虫は、このアニサキスと同じ線虫です」(医療関係者)
 先ごろ、九州大の研究グループが体長1ミリほどの線虫を使い、がんの有無を1滴の尿から高い精度で判別することに成功したと発表した。早期のがんも発見でき、実用化されれば容易に安価でがん診断が可能になるという。研究チームは「精度の向上などを進め、10年程度で実用化を目指したい」と話している。

 がん患者の呼気や尿には、特有の匂いがあることが知られており、「がん探知犬」を使った診断手法も研究されている。ただし、犬だと1日に5体程度の検体しか識別できないという。一方、九大の広津崇亮助教は「線虫は飼育が容易で、実験技術も蓄積がある」と期待を膨らませている。
 「実験で使われた線虫は犬と同程度の嗅覚を持ち、好きな匂いに集まり嫌いな匂いから逃げる習性があるという結果が出た。そこで研究チームが、健常者218人、がん患者24人の尿を採取。実験皿の上に1滴ずつ垂らし線虫の動きを調べた結果、健常者207人と、がん患者23人を正しく判定することができたのです。がん患者をがんと診断できる確率は95.8%にまで達し、がんの種類や進行度にかかわらず判別できたといいます。ただし、そのがんの種類を特定できない点が課題として残されています」(医療ライター)

 世田谷井上病院の井上毅一理事長もこう言う。
 「線虫は匂いに敏感で、前々からそういう可能性があることは指摘されていました。ただ、実用化するには相当な年月がかかると思いますね」

 実用化が待たれる。

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