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推定患者数は70万人 新築物件に潜む化学物質過敏症の恐怖(1)

 神奈川県内に住む川島和子さん(仮名・45歳)が突然、体の異変を訴えたのは5年前のことだった。全身がけだるくなるとともに、滑舌が極端に悪化。やがて、痙攣を起こし始めた。驚いた夫の聡さん(仮名・45歳)は、慌てて和子さんを病院に連れて行った。
 全身を精密検査したが、どこにも異常は見つからなかったため、治療もされず帰された。だが、症状はいっこうに改善せず、どんどん酷くなるばかり。藁をもつかむ思いでアレルギー専門のクリニックに出かけたところ、シックハウス症候群と診断された。
 実は川島さん夫婦が家を新築した10年前、床下にシロアリ駆除剤を塗布したという。
 聡さんが話す。
 「今思えば、それがよくなかった。家を守るために、シロアリ駆除剤を使うのは当然だと思っていた。まさかそのおかげで、自分の家内がおかしくなるとは思いもしなかったんです」

 その後、北里研究所病院を受診して化学物質過敏症と診断された。
 ようやく正式な病名はわかったが、これという治療方法はなく、症状はさらに悪化していく。
 「喉の粘膜が爛れ、唾さえ呑み込めなくなってしまったんです。水道水は塩素が入っているから受け付けない。困ったことに、ミネラルウオーターもダメでしてね。今は蒸留水を飲んでいます。北里研究所病院は化学物質過敏症の治療で有名ですが、通院できるのは軽症、中症の患者さんに限られる。というのも、家内のような重症患者は、排気ガスなど化学物質が溢れる街を通って行くわけですので、病院まで辿り着くことすらできないのです」(聡さん)
 症状は、梅雨時に一番酷くなるという。この時期は1年のうち一番の農繁期。農薬を散布し、除草剤を撒いて、化学物質が住宅街にも充満しているからだ。
 「本当に地獄です。家内が脱水症状に陥り、狭心症になったことは一度や二度ではありません。しかし、病院で点滴を受けることもできないのです」(聡さん)
 空気中にある見えない有毒ガスに襲われ、体調を崩す恐怖は計り知れない。世間には病気を苦に自殺を図ったケースもあるという。

 北里大学名誉教授で、化学物質過敏症の専門外来『そよ風クリニック』を開業している宮田幹夫氏が語る。
 「現代人は、様々な化学物質に囲まれて生活しています。大気中には自動車の排気ガスやゴミ焼却炉などから排出される有害物質が漂い、室内の空気は建物や家具から揮発する防腐剤や接着剤、塗料の成分などで汚染されています。一方、食べ物には農薬や食品添加物が含まれています。私たちは呼吸をしたり、飲食したりすることで、知らず知らずのうちにこれらの化学物質を体内に取り込んでいる。私たちの体は解毒機構や自律神経、免疫機構によってこれらに適応しようとするのですが、長期にわたって摂取し、ストレスの総量がその人の体の適応能力を超えると、突然、いろいろな症状が表れます」

 やがて、ほんの少しの量でも症状が出るようになり、さらに、特定の化学物質だけでなく、さまざまな化学物質にも反応して症状が出るようになる。これが化学物質過敏症だというのだ。

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