A:ある病気を治療し薬を服用しているときに、その病気や服薬とは関係なく風邪を引いたり、別の症状が現れることがあります。特に風邪の場合はありふれた病気であることからも、ご質問の方のようなケースは決して珍しくありません。
風邪が非常に軽い場合、以前から服用している漢方薬と風邪の漢方薬を併用しても構いません。しかし、ご質問の方の場合、風邪の症状がどの程度重いのかがわかりませんが、クリニックを受診したとのことですから、最低でも“中”程度だったと思われます。
問題となるのは、急性の症状が中程度以上で苦しかったり、また、風邪を引いてから中期に症状が悪化した場合にどうすれば良いかということでしょう。
その答えの指標となる大原則が、東洋医学にはあります。それは、「急なれば標を治せ、緩なれば本を治せ」ということです。ここで言う「標」とは表に現れた症状のことであり、「本」は病気の根本のことです。
頭痛を例に挙げると、ズキズキするとかキリキリするなどの痛みは「標」です。頭痛は脳腫瘍が原因でも起こりますが、その場合は脳腫瘍が「本」にあたります。
東洋医学は、考え方としては症状を取る治療です。つまり、症状を取ることを優先し、症状を取るための投薬を行います。
●急性の症状を取ることを優先させる
症状が取れると、病気によっては、それで治ることもありますが、根本の原因を解消しない限り治らない病気はたくさんあります。
そこで、症状が取れた段階で、次にその根本の原因を治すための治療を行うのです。
ですから、ご質問の方の場合も、風邪薬の服用を優先すると良いわけです。そして、風邪の急な、激しい、つらい症状がおさまるまでは、「防風通聖散」の服用はやめたほうがよいでしょう。
その理由としては、両者が互いの作用を打ち消し合い、どちらの効果も得られない、また逆に、どちらかの作用を不必要に強めてしまうこともあるからです。
三浦於菟氏(吉祥寺東方医院院長)
熱心な東洋医学の名医として著名。東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。東邦大学医学部東洋医学科教授を経て、同大学客員教授。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。