小山幸雄さん(51=仮名)は、5年ほど前の健康診断から空腹時血糖値が110mg/dl前後をウロウロしていて、ここ3年は120mg近くに上昇していたが、空腹時血糖値は100未満が正常だから、数値が悪いといってもそれほどではなかった。
体格は身長179センチ、体重68キロと細身。「お腹は出ていないしメタボじゃないから大丈夫だ」との安心感と仕事の忙しさにかまけ、精密検査を怠っていた。
運動も1カ月1回、自転車で30キロくらいのツーリングに参加するくらい。食事も運動もおろそかな生活を続けていたところ、昨年、突如として異変が起きた。
「寝る前になると脚が痺れるようになったんです。正座の後のピリピリ感というか、無数の虫が脚をはっているような感覚もして、とにかく眠れない。行きつけのクリニックを受診したところ、糖尿病の合併症の神経障害によるものだったんです」(同)
外食に頼りきって運動をほとんどしないサラリーマンにとって、他人事ではない話。小山さんは初めて怖さを感じ、大きな病院の内科で精密検査を受けた。血糖値は一目瞭然、糖尿病と診断できるくらいに上昇。腎臓検査数値も悪化し、腎症の合併も引き起こしていると言われ大ショック。
糖尿病というのは、放置していたり、治療が不十分な場合、手足の神経や自律神経などがやられる神経障害や、腎機能が低下する腎症、視力低下を余儀なくされる網膜症の順で合併症を起こすとされる。
最初に発症する神経障害発症までのタイムリミットは最短3年とされるが、小山さんは無治療でいた期間が長く、三つとも重なる重症だった。このうちの腎症は、人工透析治療の一歩手前で「何とかここで踏みとどまりたい」と、小山さんは網膜症の失明予防などとともに、今、懸命な治療を続けているという。
「糖尿病は合併症がある点で、他の生活習慣病と大きく異なります。しかも3大合併症のどれもが重く、その先の末路にあるのは心筋梗塞や脳梗塞という死にも繋がる重大病です」(医療関係者)
最後に、糖尿病の早期発見や体の異常サインにもつながる“尿チェック法”を紹介する。
健康な尿は通常「麦わら色」をしている。だが、アルコールを飲んだ翌朝や、利尿作用のあるカフェイン飲料を摂取した後は、かなり「色が薄い尿」が多量に出る。アルコールと一緒に摂取した余分な水分が排出されているからだ。
では“病気のサイン”となる尿の色はどうか。
(1)「濃い茶色の尿(ビリルビン尿)」=肝硬変やC型肝炎によるもの多い。糖尿病で尿路感染症を併発している場合は、尿の泡立ちが起きる。また肝機能障害の合併症を起こしていると、尿に尿蛋白が混じり泡立ち、直ぐに消えない。
(2)「無色透明で多尿」=無色透明の尿が1日に何度も何日も続くようなら、糖尿病の可能性を疑うべきだ。血液中の血糖値が高く、水分に引っ張られた血液が腎臓に達するとフィルター役の腎盂が余分な糖を排出しようとして、尿が多く出る。
放置は厳禁。糖尿病を甘く見ると怖い目に遭うのだ。