新聞の死亡記事などに目を落とすと、亡くなった方の大半の病死原因が肺炎と書かれている。医療関係者も、最近は高齢者だけでなく、30〜40代の若い世代にも肺炎罹患者が増える傾向にあり、油断は禁物と警鐘を鳴らす。
東京・目黒区の国立病院機構東京医療センター呼吸器内科担当医によれば、肺炎という病気は三つに分けられる。入院している人が発症する「院内肺炎」と、介護施設の入所者などの「肺炎」、そして会社員など元気な人に起こりやすいのが「市中肺炎」だ。
「この中で、院内や介護施設などで感染する肺炎は高齢の方が多いのですが、市中肺炎は30〜40代の若い世代の人も発症しています。中には劇症型の肺炎もあって、どんどん進行して亡くなる方がいるので、注意が必要です」(担当医)
では、肺炎はなぜ起こるのか。この問いに専門家は「肺炎を起こす原因菌の種類が多いのも一つです。そのために効果のある薬も異なってきますし、的確な診断と治療がどうしても必要になります」と言う。
肺炎の土台は風邪と言えるものの、肺炎と風邪は症状や経過に違いがあるという。たとえば、風邪は炎症箇所がノドや鼻など上気道に起きるが、肺炎は気管支より奥にある肺ということになる。
症状にしても、風邪の場合は発熱、鼻水、咳などが表われるが、肺炎は咳、痰、発熱の他に、呼吸困難や胸痛などが起こる。原因とされるものも、風邪は主にウイルスだが、肺炎はウイルスの他に真菌という細菌に侵され、風邪はせいぜい1週間〜10日程度に対し、肺炎になると期間も長く、重症化すれば死に至る。
また、健康な体であれば、肺炎を起こす原因菌にしても体内の防御機能で排除できるが、高齢で体力が弱っているとそうはいかない。一旦風邪をひくと、ノドや気管支などの上気道に炎症が続いてしまい、機能が崩れてしまう。その結果、肺炎の原因菌が肺の奥に入り込んで増殖しやすい状況を生む。
しかも、前述の通り肺炎の原因菌は多種多用で治療も複雑になるが、予防を考える上ではまず、風邪そのものを防ぐことが大事になってくるというわけだ。
内科、呼吸器科など総合クリニックの院長で医学博士・久富茂樹医師は言う。
「一般的には咳が止まらず、ノドが痛い、熱っぽいという症状があれば風邪と考え、数日間仕事を休んで様子をみるとか、市販薬を飲んでみようということになるでしょう。しかし、風邪の大部分(90%)はウイルス感染であり、このウイルスは人から人に感染して、初めて症状を起こす。人から人へ簡単に感染しやすいところが、ウイルスによる呼吸器感染症の怖いところなんです」