A:よく寄せられる相談ですが、漢方薬だけでダイエットするのは正直に言って難しいです。東洋医学では「痩せる薬」というのはありません。痩せるというのは、むしろ内臓の働きが低下して滋養が取れない状態とか、病気の場合なのです。
肥満の人は、どこか具合の悪いところがある場合も多いのも確かです。脾胃や腎が弱り、老廃物や余分な水分を溜め込んだ結果、むくみがあるとか、更年期など年齢による腎の働き低下で血が滞っているとか…。
また、食べ過ぎが原因で胃腸を弱らせて腹部の膨満感や便秘が続くとか、糖尿病や高血圧の人など。
こういった症状として表れた病気を治療した結果、体質が改善され、病気のときより肥満が改善されるということはあります。
漢方薬で肥満を治療するのは難しいのですが、服用するとよい漢方薬に「白虎加人参湯」があります。
●白虎加人参湯がお勧め
たくさん食べると、体の中に熱が過剰につくられ、水分が溜まります。これは漢方的な考え方で、太っているということは、体内に熱が出て水分が溜まっているということです。
そして、熱と水分が、糖尿病や痛風、ニキビ(吹き出物)をもたらします。アルコールも同じで、たくさんお酒を飲む人では、体内に熱が過剰につくられ、水分が溜まり、同じ病気や症状を引き起こします。
白虎加人参湯にはその熱や水分を取る作用があります。
また、肥満の人の多くが悩まされているのが便秘です。体力が過剰で、体が熱を持っているために腸が潤いをなくして、便が硬くなります。このタイプの人は、元気で食欲旺盛、過食の傾向があり、固太りの肥満になりやすいのが特徴です。
もうひとつは、体内に余分な水分が溜まって胃腸の働きが悪くなり、便秘になる場合もあります。このタイプの人は、体が重だるく新陳代謝が悪いので、ぽっちゃり型の肥満になることがあります。
便秘の原因を取り除くことが、健康的なダイエットへの第一歩になるでしょう。野菜、豆類、キノコ、海藻類など食物繊維の多い食品を十分にとり、肉類や脂質など高カロリー食品を抑えましょう。
そして、普段から睡眠をよくとり、ストレス解消に努めてください。その結果、全身の気の巡りがよくなると、新陳代謝も活性化し、太りにくくなります。
三浦於菟氏(吉祥寺東方医院院長)
熱心な東洋医学の名医として著名。東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。東邦大学医学部東洋医学科教授を経て、同大学客員教授。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。