『バックストリート・ブルース 音魂往生記』(宇崎竜童・長谷川博一/白夜書房 3000円)
宇崎竜童がダウン・タウン・ブギウギ・バンドを率いてレコード・デビューしたのは1973年のことだ。本書は彼の音楽活動40年を振り返り集大成したものである。ライター長谷川博一が聞き手となって宇崎がしゃべる、というインタビュー・ページがほとんどを占めるが、ディスコグラフィーや他の歌手に提供したシングル曲一覧など資料面も充実しており、まさしく集大成なのだ。
団塊世代より一つ上の1946年に生まれた彼がたどってきた軌跡は、偉業の名にふさわしい。『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』の印象が最も強いのだけれど、山口百恵のアイドル・イメージを一変させた作曲家という顔も日本歌謡史に残る功績と誰もが認めるものだ。竜童組を率いて、英米ロックにとらわれない日本人ならではの“お祭り的エモーション”を炸裂させた姿は勇ましかった。
本書の読みどころはいくつもある。そうした目立った仕事に関わるエピソードは当然網羅している。しかし、それだけにとどまらずデビュー前に影響を受けた音楽について、あるいは原田芳雄、松田優作といった映画人との交友録など話は多岐にわたる。一人の才人が生まれる背景、努力、飽くなき好奇心が存分に語られている。特に妻・阿木燿子との強いつながりを知るには格好の本だ。このコンビが作り上げた情念の世界は唯一無二である。
(中辻理夫/文芸評論家)
◎気になる新刊
『呆韓論』(室谷克実/産経新聞出版・924円)
正統性が疑われる朴槿惠政権、両班根性丸出しの国連事務総長、対馬の領有をも主張しはじめた「脳内ファンタジー史」…。日本人には理解しがたい“文化”と“感覚”を、かの国の報道からつまびらかにする。
すべての問題の根源と責任はかの国の病にある!
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
『ランニングマガジン・クリール』(ベースボール・マガジン社/940円)は、アマチュアランナーのための雑誌。
マラソンやトライアスロン大会出場者が読者対象とみられ、「レース分析&トレーニング見直し大作戦」「自然で効率的なフォームを手に入れよう」など、専門家による提言がずらり。並みのレベルのランナーにはついていけない内容と思いきや、丁寧かつ健康にも役立つ。これから走ることを日課にしようという人には指針となりそうだ。
長距離走のウンチクを吸収するにも役立つ。この時期になると話題に上るのが箱根駅伝だが、テレビ観戦する際に解説者が口にする「山登り」「低体温症」といった言葉が誌面にも表れており、一読しておくと、ひと味違ったレースの見方ができるかもしれない。
「特製トレーニングダイアリー」や、「ハワイでランニングを楽しむガイドブック」など、別冊付録が2冊という豪華版だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意