糖尿病は、大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病に分けられる。1型は自己免疫(リンパ球が誤って自分の組織を攻撃してしまう病気)で、インスリンの生産工場であるすい臓のβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなって発症するもので、若い人に多いのが特徴だ。
2型は主に過食や運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が原因で、インスリンの分泌が低下し、効きが悪くなるもの。こちらも最近、若年層に広がり始めているという。
糖尿病などの生活習慣病に詳しい東京・大田区で総合クリニックを開く医学博士・久富茂樹院長は次のように語る。
「2型糖尿病で、よく知られているのが肥満です。欧米では、肥満によってインスリンの出が悪くなる(インスリン抵抗性と呼ぶ)のですが、日本人はそれほど太っていないのに発症します。それは、インスリンの分泌が少ない事が原因である場合が多い。インスリンが少ないのは、β細胞機能が弱いという体質を受け継いでいるからです。粗食の時代なら少ないインスリンで対処できたのですが、現代のように高カロリー・高脂肪食、運動不足、ストレス過多、夜型生活といったライフスタイルに変わってしまうと、ちょっとした事でも血糖値が上がってしまう。これが最大の要因です」
久富院長によれば、この体質はアジア人に多いそうで『アジア型糖尿病』として認知されているという。
糖尿病で厄介なのは、初期の頃はほとんど自覚がないことで、そのまま放置されることが少なくない。その結果、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害という“三大合併症”だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクも高まる。そして、場合によっては失明や人工透析を行う羽目にもなりかねない。糖尿病が怖いと言われる所以である。
日本糖尿病学会などのガイドラインや専門家の話を総合すると、患者が糖尿病と診断されると「制限のある生活になる」「厳しいことを要求される」など“負のイメージ”を持つ人が多いといわれる。
だが、専門医は「それは間違いです。要は、お腹いっぱい食べて、体を動かさずに寝てしまうような生活が一番いけない。そうした生活を少し改善するだけでよくなる人はたくさんいます」と言い、食事療法も運動も、継続する事が大事であり、楽しく出来る方法を工夫することで症状も変わると説明する。
たとえば、週2回ぐらいは肉を食べてもOKであり、少し食べ過ぎたと思ったら、翌日は量を減らせばいいわけ。それを1週間単位、1カ月単位で修正できることが大事だ。あまり四角四面に考えると、ストレスになり、かえって血糖値を上げるので逆効果だという。
また、運動療法も難しく考えないことだ。
「1日20〜30分歩く事を、週3日以上行うだけでも効果があるといわれます。膝や腰の悪くない方は、まず歩く事を勧めますね。また、寒い時や雨の日は家の中を歩き回るだけで違ってくるという報告もあります」(久富院長)
家の中でゴロリと横になったままのお父さんには耳の痛い話かも知れないが、ここは健康維持のために実践あるのみだ。