なぜ、こうも発生するのか。今週は、ノロウイルスの実態と対処法についてお伝えしよう。
ノロウイルスは、特に冬場に発生するインフルエンザの流行期と重なるため、一時期は“集団カゼ”“胃腸カゼ”として取り扱われてきた経緯がある。
感染力が強いため、少量のウイルスでも移り、感染経路を追跡しても多様でわかりにくいのが実状だ。その上、「人から人へ」の感染力も強いため、保育園や幼稚園、学校、福祉施設などの集団生活の場では大量感染を引き起こすので、注意が必要とされる。
「感染力が強いのが特徴です。学校や福祉施設などの集団生活をする場からの発症が多いのですが、そればかりではない。サラリーマンがよく利用するレストラン、居酒屋、仕出し弁当、民宿などの食べ物を扱う所は、注意しなければなりません」
こう指摘するのは、東京都内で総合内科クリニックを営む医学博士・久富茂樹院長だ。そしてこう続ける。
「一般的には、カキなどの二枚貝の生食(なましょく)による食中毒がよく知られています。主な症状は、吐き気、嘔吐、発熱、下痢などですが、免疫力が低下した老人や乳幼児は深刻。脱水症や合併症によって重症化して、死亡する例が少なくありません。ただ、軽いものだと1〜2日で症状は収まりますが、人によっては1週間から1カ月程度罹る。その後、ウイルスは便によって排出され、体力も回復に向かいます」
ノロウイルスには、いくつかの細かい型がある。以前は、小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれた。人の腸の中だけで増殖し、患者や感染者の便や嘔吐物に大量に含まれている。それらを処理した器具や手指は、2次感染を起こす十分な量のウイルスに汚染されてしまう。
また、食品や患者の便、嘔吐物が付着した衣類、敷物などの中で、ウイルスが比較的長く生き続けることが確認されている。専門家は「ノロウイルスは、多くのウイルス菌とは違って、乾燥状態の中でもとても強く、長く生き続けている」と言う。
つまり嘔吐した物が、壁やカーテンに付着した場合、長期間ウイルスの感染性が保たれ(生き続け)ているので、何かの拍子にその汚染した部分に手が触れたり、その手を通じて口に物が入るとウイルスの“感染が成立”ということになる。