いわゆるオーナーブリーダー(自分で生産したサラブレッドを自分が馬主となって走らせる人)ではない、生産馬を馬主に売ることで生計を立てているマーケットブリーダーは、生産馬が将来どんな競走馬に成長するかというのとは別に、まずは無事に売買契約を成立させることが何より重要となってくる。
「来年2015年の夏に行われる予定の、日本最大の競走馬セリ市セレクトセールには、誕生したばかりのオルフェーヴル初年度産駒が数多く上場されることになると思いますが、最高級の繁殖牝馬を母に持つオルフェーヴル産駒は、かなりの高額で取り引きされるはずです。その中には1億円以上の超高額購買馬も登場してくるでしょう。単に強いだけでなく、阪神大賞典における大逸走など、予想外の“チン事”も引き起こしてしまうオルフェーヴルのことが大好きだった一般の競馬ファン同様、その産駒から父を彷彿とさせる個性的な超大物が登場してほしいと願っている馬主も、間違いなく多いはず。もし、決して大きな規模ではないマーケットブリーダーから、そんな馬主の心理を刺激する高額購買馬が誕生すれば、そのこと自体、種牡馬オルフェーヴルが日本馬産界に果たす大きな貢献になると思います」(競馬雑誌記者)
フランスのGII競走フォア賞を連覇し、欧州競馬最高賞金額が懸かった凱旋門賞で2年連続2着したオルフェーヴルは、海外の競馬関係者からの認知度が極めて高い日本馬でもある。例えば、海外の生産者がオルフェーヴルと種付けするために繁殖牝馬を日本に送り込んできたり、国際的バイヤーが海外で走らせるためにオルフェーヴル産駒を購入するケースも十分に考えられる。
とはいえ、前途洋々に思える種牡馬オルフェーヴルであっても、実際に産駒が走ってみなければ、その成否はわからない。内外を問わず、成功が確実視されていた超一流競走馬が、種牡馬としてはまったくの大失敗に終わってしまう例も、案外と多いのだ。
オルフェーヴルが、その父ステイゴールドから受け継ぐサンデーサイレンス系は、ディープインパクト、ダイワメジャー、ハーツクライら、ランキング上位種牡馬たちも属し、現在の日本馬産界で、かなり飽和状態の父系となっている。もし初年度や2年目産駒が好結果を残せなければ、激烈な生存競争を繰り広げているサンデーサイレンス系種牡馬の中で、アッという間に落ちこぼれてしまう可能性も決して皆無ではない。
いずれにしても、現役時代以上に厳しい闘いが待ち受けている種牡馬の世界。希代の名馬オルフェーヴルが、その中でどんな存在感を放つのか−−。あの圧倒的な強さを受け継ぐ二世の誕生をぜひ期待したい。