例えば徹夜明けの翌日、血圧は上がり一日中10mmHgと高いまま。血圧を下げる薬は一錠あたり10〜20mmHg下げるのがやっとなだけに、効果も薄くなり集中力も落ちる。
専門家によれば、徹夜が続くと睡眠と覚醒のリズムが不規則になり、体温や血圧のほか、ホルモンの分泌など他の生体リズムも狂い、健康体も崩れてくる。
しかし、変調はそれだけではなさそうなのだ。
東京多摩総合医療センター脳神経内科担当医はこう語る。
「人は眠っている間に成長ホルモンが出て細胞を再生します。睡眠不足が多いと、そのホルモンの分泌が少なくなるので老化が進みます。当然、免疫機能も低下するし、病気に対する抵抗力が落ち、病気にかかるリスクも高まる。言い換えれば、それで命を縮めることに繋がるということです」
さらに睡眠療法を研究する足立敦司氏は言う。
「日本人は、世界の人と比べるとあまり眠っていない。OECD(経済協力開発機構)による'09年の報告では、加盟18カ国中、日本は韓国に次いで2番目に睡眠時間が短かった。また他の調査でも、日本人の中高年世代の平均睡眠時間は、他の世代が7時間以上あるのに6時間程度しかない。長寿国といわれる一方で、睡眠不足で不健康な人が実に多いのです」
徹夜などによる睡眠不足が身体にどのような影響を及ぼすのか。足立氏が続ける。
「事例はいろいろですが、徹夜は、まず起きている時間が長いことにより食欲が増えます。昼間は食べた物を分解、代謝しようとする動きが体内にありますが、夜は体を休ませるために贅肉にする動きが強く出て、太りやすくなるのです。そしてじわじわと糖尿病や肥満、メタボにつながり、悪化する可能性がある。また心拍数や血圧が上昇し、高血圧へのリスクも高まります。集中力や免疫力の低下、心臓病や風邪にかかりやすくなるなど、さまざまな病気を患いやすくなります」
しかも、睡眠時間が短い人は早く老けるという話も聞くが、これもあながち俗説とはいえない。
「人間は眠っている間に成長ホルモンが出て細胞を再生し、抗老ホルモンであるメラトニンが分泌されます。しかし睡眠と覚醒のリズムが不規則になると、ホルモン分泌などの生体リズムが狂ってしまう。そのため、極端な“宵っ張りの朝寝坊”など睡眠時間がバラバラになり睡眠障害を起こしたり、老けを早めることになるでしょう」(同)
とはいえ、「仕事が面白いし、多少加重労働になっても大丈夫」という人も多い。確かに、やりたいことをしている時は疲れていてもそれほど免疫力を落とすことはないかもしれない。しかし、それにも限度があり、いつの間にか、疲れが溜まって心身ともにバランスを崩すことになる。何事にも限界があるのだ。