どうしたら兆候を早く見つけ、病気を防げるか。専門家は「これらの素因となる悪玉コレステロール値などを、きめ細かくチェックする必要がある」と言うのだが−−。
日本動脈硬化学会は昨年、5年ぶりに予防指針を改めた。内容は、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールの基準値を、より細かくリスクに応じたものに改訂、過去の病歴など個人のリスクに応じた治療法を提起している。
動脈硬化というのは、読んで字のごとく、心臓から血液を身体の各部に輸送する血管、すなわち動脈に、エネルギーとなるコレステロールや中性脂肪などが溜まって詰まったり、硬くなったりすると、弾力性、柔軟性を失う。結果、スムーズに血液が流れなくなり、脳や心臓などの臓器、筋肉などの組織にとって必要な酵素や栄養の供給が出来なくなる。さらに高血圧によって血管への負担が増え、動脈はもろくなり、硬化してしまう。
症状がさらに進行すれば、日本人の死因で高いと言われる心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳疾患(脳梗塞、脳出血など)を引き起こす恐れがある。
最近では、テレビ東京のエース・大橋未歩アナが脳梗塞で倒れ、話題になった。幸い軽度で後遺症もないとのことだが、当分の間、治療が必要で、再発の可能性も指摘されている。また少々古くは、巨人の終身名誉監督・長嶋茂雄氏、元サッカー日本代表のオシム監督も脳梗塞で倒れ、今もリハビリ治療が欠かせない状況にある。
こうした動脈硬化を招く要因はどこにあるのだろうか。昭和大学病院の循環器内科医はこう説明する。
「この病気は食事、運動、喫煙、ストレスなどの生活習慣の違いによって大きく影響します。たとえば動物性脂肪の多い高カロリー食を摂り続ければ、血中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増えるし、過酸化脂質を増加させます。それらは血管壁に付着して血管を詰まらせ、血管を破く原因も生む。やはり第一に生活習慣を見直すことが、予防する上で大事です」
また動脈硬化は加齢とともに進行するので、一種の“老化現象”ともいえる。しかし、この病気は急に現れるのではなく、若い頃から始まり、40歳を過ぎる頃から徐々に症状が出始める。
つまり、動脈硬化の予防は若いうちからという事になるわけだが、なかなか実践できないのが現実だ。
本誌でお馴染みの新潟医大の元管理栄養士で料理研究家・林康子氏は、「食事面から始めたらいいと思います。バランスの取れた食事を心がけて頂き、ミネラル・ビタミンを補給し、食事の量にも腹八分目にとどめるなどを気を付けることです」と語る。
さらに、脂質の多い肉など動物性脂肪の摂り過ぎには注意する。それに代わりオメガ3といわれる脂肪酸が多い食事(青魚、えごま油、シソ油、亜麻仁油、くるみ、緑黄色野菜、豆類など)を積極的に摂ることを薦めている。