吉田投手からラブコールを受けた巨人は8月30日にスカウト会議を開き、甲子園大会に関する調査結果をまとめている。
「岡崎郁スカウト部長が会議後、記者団に囲まれました。高評価しているのは間違いありませんが、吉田投手の進路が未定であることを理由に『何も言えない』とはぐらかしました」(スポーツ紙記者)
奇しくも、同日の大阪では、阪神が定例のオーナー報告会を催していた。しかし、同会合では営業成績の話に終始していたという。「ドラフトの議題は意図的に避けた」というのが、周囲の一致した意見だ。
「巨人、阪神とも夏の甲子園大会を経て、当初の指名順位に関する予定が狂い始めたんです。両球団とも即戦力の大学生投手を1位指名し、3位あたりから高校生投手を補強していく予定でした。そんな中、巨人は競合覚悟で吉田君を1位指名するべきか、もし抽選で敗れた時の外れ1位は誰を指名すべきかで揺れています。即戦力投手もハイレベルな高校球児も、残っていないだろうと予想しているからです」(球界関係者)
12球団のスカウトはU-18の合同練習や壮行試合も視察したが、そこで「改めて」評価を高めた選手がいた。それが大阪桐蔭の根尾昂内野手(18)だ。
投手、遊撃手、外野をこなし、走攻守すべてにおいて群を抜く。今夏の甲子園での打撃成績は4割2分9厘。これまでも高く評価されてきたが「やっぱり、物が違う」と、各スカウトはため息まじりに語っていた。
“細マッチョ”であることが分かったこともあるが、「改めて」と表現されるのにはワケがあった。
「府大会などで、投手起用されましたが、『二刀流は無理』との判断がされました。低めに2球続けて威力のあるボールを投げられないからです。日本ハムが『救援限定の二刀流』と言ったみたいですが、リップサービスでしょう」(同)
プロ志望届の提出期限は、10月21日。吉田投手は進学を約束したとされる八戸学院大側とも話をしなければならないため、ギリギリまで結論を出せない。指名後の交渉を円滑に進めたいスカウトは、吉田投手の返事待ちが遅れ、他選手指名に切り換えた場合、誠意を疑われてしまう。つまり大半の球団が根尾内野手に切り換えてくる可能性が高い。
「高岡商(富山)の左腕、山田龍聖も評価を上げました。攻撃的な投球は吉田に匹敵します」(在京スカウト)
甲子園で881球を投げた代償が懸念されたが、8月31日の壮行試合に投げたことで、巨人はスタミナの項目に二重丸を付けたという。
吉田評において慎重なのは、「ギリギリまで進路表明を保留し、他球団を撤収させる作戦で、それを見破られないため」との声もあるという。