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ワラタ号の笑えない消失(6)

 いまからおよそ百年ほど前、南アフリカのダーバン沖を航行していた大型商船ワラタ号が、寄港地であるケープタウンへの入港予定日を過ぎても到着せず、洋上で忽然と消息を絶った。当時は大型商船でも船舶無線が普及しきっておらず、残念ながらワラタ号も無線機を備えていなかった。そのため、ワラタ号が遭難に至った状況や、大まかな遭難位置なども全くわかっていない。そして、大規模な捜索活動が展開されたにもかかわらず、生存者はもちろん、遺体や漂流物さえ発見されなかった。

 あまりに謎めいた消失だったため、当時から様々な憶測や、根拠の無い噂が飛び交っていた。中でも有力だったのが船体の欠陥による沈没説だったが、調査によって完全に否定された。しかし、それとは別に広く支持された憶測がもうひとつ存在した。それは、エンジンの故障によって航行不能となったワラタ号が洋上を漂流し続けている、というものであった。

 そのため、ワラタ号は「オーストラリアのさまよえる船」や、あるいは有名な漂流船から「オーストラリアのマリー・セレスト」などとも呼ばれたが、この漂流説にはそれなりの根拠が存在していたのである。

 まず、当時の船舶は大型船も含め機関部の故障や不調が多く、時には洋上で航行不能となることさえあった。更に、ワラタ号が消失する10年前には、同じ南アフリカ沖でニュージーランドの貨物船が航行不能となり、数か月かけてオーストラリア近海まで漂流した末に救助されるという、劇的な遭難事件が発生していたのである。また、ワラタ号には海水から真水を生成する装置が搭載されていた他、食料も十分に搭載しており、更に小麦などの農産物を大量に積載していたことから、半年かそれ以上の漂流にも耐えうると考えられたのだ。

 しかし、数か月に渡る捜索活動によっても手がかりすら発見できず、船体はおろか遺体すらどこにも漂着しなかったことから、ワラタ号が沈んだのはほぼ確定的とみなされるようになった。とはいえ、沈没したという証拠も存在しておらず、消失から数年後に第一次世界大戦が始まるまで、漂流説は根強く支持され続けたという。そして、漂流説の中にはワラタ号が南氷洋まで漂流し、乗客と乗員は全て凍死したとするものもあった。

 その説によると、氷に閉ざされたワラタ号が亡者を乗せて、現在もなお人知れず南氷洋をさまよい続けているという。

(了)

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