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ワラタ号の笑えない消失(4)

 およそ百年ほど前の1909年、南アフリカのダーバン沖でイギリスとオーストラリアを結ぶ大型商船ワラタ号が消息を絶った。イギリス海軍の艦艇も動員して大規模な捜索活動が始まったが、捜索開始から数か月たってもなお、ワロタ号はおろか、残骸や漂流物すら発見されなかった。また、海岸でも広範囲に捜索が行われたものの、ワラタ号の救命ボートや乗船者の遺体などといった漂着物も発見されなかった。

 そして、ワラタ号は安定性不足という重大な欠陥を抱えており、今回の消失は船体の欠陥がもたらした人災との噂が広まった。噂を広めた人々は船舶に関する経験や知識をもたない素人だったが、社会的地位の高い人物も含まれていたため、英商務省が調査に乗り出し、多くの労力と時間を費やしてワラタ号の欠陥説は事実無根との結論を出すに至ったのである。

 では、ワラタ号が消失した本当の原因とは、いかなるものであったのか?

 まず、ワラタ号はほぼ満載に近い状態だったが、積み荷の大半は小麦などを中心とする農作物だった。ただし、その他に1000トンほどの鉛地金を搭載していた他、消失時は燃料の石炭も十分に搭載していたとされる。

 残念なことに、出港後のワラタ号と遭遇した船舶は少なく、ダーバン沖で発光信号を交わしたとされるクラン・マッキンタイア号乗組員の証言ですら、絶対に確実とは言いがたいのだ。クラン・マッキンタイア号以外にもワラタ号と遭遇した船舶はあるものの、いずれも確実性は乏しい上に「全ての遭遇位置と時間が正しいのであれば、ワラタ号は航路上を行きつ戻りつしていたことになる」ため、不確実とされるのだ。

 ただし、確実、不確実を問わず、全ての遭遇事例は一昼夜の間に集中していること、その夜には天候が悪化して波が高かったことは確かで、さらに不確実ながら「火災を思わせるほど大量の煙を吐きつつ航行する大型船」を目撃したと主張する商船の乗組員が存在したのである。

 これらの情報から、ワラタ号の喪失については次のような仮説が提唱された。

(続く)

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