社会 2021年04月17日 07時05分
国宝の曜変天目、刀剣ら7点一挙公開で一見の価値あり! 静嘉堂文庫美術館、移転前最後の展覧会『旅立ちの美術』開催
世田谷区・静嘉堂文庫美術館で、移転前最後の展覧会『旅立ちの美術』が4月10日から開催されている。 >>全ての画像を見る<< 同美術館は2022年、展示ギャラリーを千代田区丸の内・明治生命館内に移転する。同展覧会を現在の世田谷区岡本からの「旅立ち」と位置づけ、旅立ちとそれに伴う「出会い」と「別れ」をテーマに、人々が憧れた理想郷への旅、時代とともに受け継がれていく名品の旅路などを紹介、静嘉堂の歩みも振り返る。 同館は、1892年岩﨑彌之助(三菱第二代社長)の神田駿河台邸における文庫創設以来、1911年に高輪、そして1924年に現在の世田谷へ拠点を移し、1977年より所蔵する美術品などの一般公開を行ってきた。同展覧会では、現在同館が所蔵する名品の伝来にまつわるエピソードとともに、静嘉堂130年の歩みと美術館の30年を振り返ることができる。 6月6日までの開催期間のうち、前期(4月10日~5月9日)は、同館が所蔵する《曜変天目(ようへんてんもく)》、《禅機図断簡 智常禅師図(ぜんきずだんかん ちじょうぜんじず)》など、国宝7点が一挙に公開される。これは1998年の『静嘉堂・国宝展』以来23年ぶり、展示室に一堂に会するのは初めて。後期(5月11日~6月6日)も引き続き《曜変天目(ようへんてんもく)》、《太刀 銘 包永(たち めい かねなが)》、《倭漢朗詠抄 太田切(わかんろうえいしょう おおたぎれ)》の国宝3点を展示する他、重要文化財《聖徳太子絵伝》を修理後初公開する。 今回前後期通して公開される国宝《曜変天目》は、南宋時代(12~13世紀)の制作。「天目」は宋代の喫茶法・点茶法のために作られた喫茶専用の碗を指す日本での名称だ。《曜変天目》は、黒釉の掛かった碗の内面に浮かぶ大小の斑紋の周囲に、青色や虹色に輝く光彩が現れたものをいう。完全な形のものは日本に現存する3点のみ。本碗は光彩が鮮やかで、端正な姿や精緻な高台削りなど緊張感がみなぎっている。江戸幕府3代将軍徳川家光から乳母の春日局に下賜されたものといわれ、その後淀藩主稲葉家に伝わったため「稲葉天目」と呼ばれている。 同じく前後期通して公開される国宝、《太刀 銘 包永》は鎌倉時代(13世紀)の制作。作者の初代包永は大和の刀工一派・手掻派の祖で、奈良東大寺の転害門前に住み、正応年間(1288~1293)頃に活躍した。腰反り高く優美な姿が特徴的で、刃中は変化に富む同太刀。茎(柄に収められるグリップ部分)先には「包永」の二字銘も刻まれている。 世田谷区の地域風景資産、せたがや百景にも選定されている静嘉堂緑地内に位置する世田谷のギャラリーは、同展覧会で見納め。照葉樹林を抜けた先にある趣深い美術館に訪れてみてはいかがだろうか。