社会 2023年04月05日 22時01分
「おぐらが斬る!」北朝鮮の悲惨な実情 人権問題報告書によると・・・
韓国統一省が、3月30日に公表した『北朝鮮人権問題報告書』という文書がある。これは2017~2022年に、508人の脱北者から聞き取った証言から作成されたもので、犯罪や死刑の実情などを公開したものだ。この文書は、北朝鮮におもねる文政権下では公開されてこなかったが、一転強気な尹政権になって公開に踏み切ったものだ。この報告書によると、2012年までは祖国反逆罪など7つの罪が死刑の対象となっていたが、2022年までに4つ増えて11の罪が死刑対象になったという。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため設定した封鎖区域への出入りも、死刑の対象となり、中朝国境では「3回警告を受けて止まらなければ射殺」という規定まであるらしい。また北朝鮮には海外の文化を取り締まる『109連合指揮部』という組織があり、特に韓国の映画やテレビドラマを観る国民を取り締まるのが任務。2015年には元山(ウォンサン)に住む16~17歳の6人が、韓国の映像を観て、アヘンを使用したとして、死刑が宣告され即座に銃殺刑に処されたという。2017年の報告では、妊娠6か月の女性が自宅で踊っていた動画が拡散。その動画の中で金日成の肖像画を指さす動画があったとして公開処刑。他にも知的障がい者や精神疾患者は『83号管理所(83号病院)』という施設に強制送還され、人体実験の対象にされるという報告もある。障がい者や精神疾患者を人体実験にするとは、ナチを思い出されるようなことだが、21世紀のしかも隣国でこんなことが行われているのかと、嫌な気持ちにならざるを得ない。ただこのような報告書に出てくるということは、北朝鮮の国民が国の体制に不満と不信を抱いていることには間違いがない。少しでも体制に反する国民を極刑にすることで「見せしめ」を行わなければいけないということだ。他に報告書によると、韓国人の拉致被害についても書かれている。北朝鮮に拉致された韓国人は、516人と推定されているが、拉致後も差別や監視対象になるなど人権侵害を受けているという。日本も2002年に5人の拉致被害者が帰国してから21年間、特にこれといった進展はない。日本人拉致被害者は、まだ12人もいる。いまや連発する北朝鮮のミサイルや、拉致被害、北朝鮮国民への人権問題に、ともすれば慣れてしまったり、諦めがちになりそうだが、決して忘れてはならない問題だ。プロフィール巨椋修(おぐらおさむ)作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。